1954年アルゼンチングランプリ

1954年アルゼンチングランプリ：雨とドラマが織りなす、ファンジオの母国初勝利

1954年1月17日、アルゼンチンのアウトドローモ・17・デ・オクタブレ。F1世界選手権の開幕戦、1954年アルゼンチングランプリが開催されました。このレースは、新たなマシンとドライバーの動向、そして予想だにしない展開によって、F1史に刻まれる激戦となりました。

新車投入とドライバーの移籍劇

この年は、各チームが前年度モデルを進化させたマシンを投入しました。フェラーリは625、マセラティは250Fといった、改良が加えられた強力なマシンがグリッドに並びました。

ドライバーの動向も大きな話題でした。翌年からメルセデスに移籍予定だったファン・マヌエル・ファンジオは、メルセデスの新車開発遅延により、この年もマセラティから参戦。一方、前年度チャンピオンのアルベルト・アスカリとルイジ・ヴィッロレージはランチアに移籍していましたが、彼らが駆るD50の開発が間に合わず、このレースを欠場せざるを得ませんでした。

レース展開：雨と抗議が絡み合う緊迫の戦い

スタートでは、フェラーリのジュゼッペ・ファリーナ、ホセ・フロイラン・ゴンザレス、マイク・ホーソーンの3台が先行。ファンジオは出遅れ、後方からの追い上げを強いられました。しかし、レース中に雨が降り始めると状況が一変。抜群のドライビングテクニックを持つファンジオがトップに躍り出ました。

雨が止むと、再びフェラーリ勢がファンジオを追い抜き、トップ争いは白熱。しかし、再び降り出した大雨の中、ファンジオは見事な走りでトップに返り咲きます。

そして61周目、ファンジオはタイヤ交換のためピットイン。しかし、ここで問題が発生します。規定人数以上のクルーがタイヤ交換作業に加わったのです。これに対し、フェラーリチームは激しく抗議。ファンジオの失格を確信し、自チームのドライバーたちに減速指示を出しました。

フェラーリの思惑とは裏腹に、抗議は却下されました。ファンジオはその後もトップを快走し、母国アルゼンチンでのグランプリ初優勝という栄冠を手にしたのです。

その他の出来事

このレースでは、モリース・トランティニャンが5位入賞を果たし、自身初の選手権ポイントを獲得。ファリーナは17回目の表彰台（アルベルト・アスカリと並ぶ記録）、そして22回目のポイント獲得（新記録）という偉業を達成しました。さらに、予選では47歳79日という最年長ポールポジション記録も樹立しました。

レース結果とその後

このレースの結果は、ドライバーズチャンピオンシップの行方を占う上で大きな意味を持ちました。ファンジオはシーズン序盤から好調を維持し、最終的にチャンピオンに輝きます。1954年アルゼンチングランプリは、まさにF1史に残る、ドラマチックで記憶に残る一戦だったと言えるでしょう。

注記

当レースは左回りコースで開催されました。
マセラティ250Fは、このレースでデビューしました。

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