1955年イタリアグランプリ

1955年イタリアグランプリ：メルセデスの栄光と終焉

1955年9月11日、イタリア・モンツァ・サーキット。悲劇のル・マン24時間レースの影が長くのびる中、F1世界選手権の最終戦、イタリアグランプリが開催されました。すでにファン・マヌエル・ファンジオのドライバーズチャンピオンは決定済み。フランス、ドイツ、スイス、スペイングランプリがキャンセルされた結果によるものでした。

コースと参戦マシン:

モンツァ・サーキットは改修工事を終えたばかり。5.750kmのロードコースと、高さを10mに引き上げられた4.250kmのオーバルコースを組み合わせた複合コースが採用されました。メルセデスは4台体制で参戦。ファンジオとスターリング・モスには空力特性に優れたストリームラインボディのW196、カール・クリングとピエロ・タルッフィには従来型のオープンホイールタイプのW196が用意されました。

苦戦が続いたフェラーリは、F1撤退したランチアからD50マシンとレース資材を受け継ぎ、フィアットからの資金援助も得て、新たな戦力としてD50投入を計画。しかし、フリー走行でジュゼッペ・ファリーナが250km/hでタイヤのトレッドが剥がれるというアクシデントに見舞われ、決勝では従来の555のみで参戦することとなりました。ファリーナはこのレースがF1最後の参戦となりました。

レース展開と結果:

レースは序盤からメルセデスが独走状態。モスは跳ね石でウィンドスクリーンを破損するトラブルに見舞われましたが、驚異的なスピードでピット作業を終え、レースに復帰。しかし、その後リアアクスルを破損してリタイア。クリングもリアアクスルのトラブルに見舞われました。一方、ファンジオとタルッフィは最後まで安定した走りを見せ、メルセデスワンツーフィニッシュを達成。3位にはフェラーリのエウジェニオ・カステロッティ、4位にはマセラティのジャン・ベーラが入賞しました。

オーバルコースのバンピーな路面状況が、多くのマシンの足回りに大きな負担をかけ、多くのリタイアを招いたことがうかがえます。

メルセデスの撤退:

このイタリアグランプリを最後に、メルセデスはモータースポーツからの撤退を表明しました。エンジニアを市販車の開発に集中させる必要性に加え、ル・マン24時間レースでの事故も撤退の大きな要因として挙げられています。メルセデスがF1に復帰するまでには、エンジンサプライヤーとして1994年、コンストラクターとして2010年まで長く待つことになります。そして、次のメルセデスのワンツーフィニッシュは、実に59年後となる2014年マレーシアGPまで待つこととなりました。

このレースは、メルセデスのF1における黄金時代を象徴する勝利でありながら、同時にモータースポーツ界における大きな転換点となったレースと言えるでしょう。

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