1957年のテレビ (日本)

1957年の日本のテレビ放送

1957年（昭和32年）は、日本のテレビジョン放送が全国へと広がりを見せ、新たな可能性を模索し始めた画期的な一年でした。この年、地方における放送網の整備が進むとともに、将来の放送界を担うことになる新たな放送局が設立され、また、多岐にわたるジャンルの番組が誕生するなど、テレビが日本の社会に根付き始める重要な節目となりました。

放送網の広がりと新たな放送局

この年の特筆すべき出来事の一つは、全国各地におけるテレビ放送の展開です。4月1日には、北海道の札幌で北海道放送（HBC）テレビが本放送を開始しました。また、5月にはNHK松山局と小倉テレビジョン、6月にはNHK静岡テレビジョン、そして12月にはNHK岡山テレビジョン、金沢テレビジョンが開局するなど、地方におけるNHKのテレビ放送網も着実に拡大しました。

さらに、夏の7月8日には、郵政省から新たな民放局として、富士テレビジョン（後のフジテレビジョン）、日本教育テレビ（後の全国朝日放送→テレビ朝日）、大関西テレビジョン放送などに予備免許が交付されました。これは、将来の日本のテレビ放送の勢力図を形作る上で極めて重要な一歩でした。特に日本教育テレビに対しては、教育放送の推進を目的とした明確な条件が付されました。

日本教育テレビへの付帯条件

日本教育テレビに課された予備免許の条件は以下の通りです。

1. 番組編成における教育番組と教養番組の時間比率を厳守すること。具体的には、教育番組が週間の放送時間の53%以上、教養番組（一般教養、音楽舞踊、スポーツ、文芸娯楽を含む）が30%以上を占めること。
2. 番組編成の審議を行う機関を設置すること。この機関は、一般有識者を委員の3分の2以上とし、その構成に偏りがなく公正であること。
3. 番組編成の基本的な方針（綱領）は、この審議機構の決定に基づき策定すること。
4. 学校教育向けの放送時間帯においては、一切の広告放送を行わないこと。
5. 教養番組以外の一般番組についても、教育的な目的の達成を妨げることのないよう配慮すること。
6. 他の放送事業者に対し、教育および教養に関する番組が円滑に放送されるよう、可能な限りの協力を惜しまないこと。
7. 郵政大臣が特に必要と認めて指示する事項については、これを尊重し従うこと。

これらの条件は、教育放送としての役割を重視する国の意向を強く反映したものでした。

秋には、郵政大臣であった田中角栄氏によるいわゆる「大量予備免許」が実施され、10月22日には民放34社36局、そしてNHKの7局（室蘭、盛岡、福島、長野、新潟、防府、高知）に対し、一斉にテレビジョン放送の予備免許が交付されました。これは、後の日本における民放テレビ局のネットワーク形成に大きな影響を与える出来事でした。

また、この時期には新たな放送事業者の設立も相次ぎ、11月1日には日本教育テレビが、11月18日には富士テレビジョンがそれぞれ設立されました。

多様な番組の登場

1957年は、今日のテレビ番組の原型となるような、様々なジャンルの番組が誕生した年でもあります。スポーツ中継では、日本テレビが御幸毛織の単独提供で『ミユキ野球教室』を開始し、長期シリーズとなりました。ドラマ分野では、大阪テレビ放送が中田ダイマル・ラケット主演のコメディ時代劇『ダイラケのびっくり捕物帖』をスタートさせました。また、日本テレビでは刑事ドラマの先駆けとされる『ダイヤル110番』（ヤクルト提供）が始まり、これも人気を博しました。

視聴者の健康増進に貢献するNHKの『テレビ体操』が10月7日に放送を開始し、この番組は現在に至るまで半世紀以上にわたり放送が続く長寿番組となっています。料理番組の代名詞ともいえるNHKの『きょうの料理』も11月4日に始まり、こちらも長く愛される番組となりました。

年末のテレビ編成も注目されました。12月31日には、お馴染みの『第8回NHK紅白歌合戦』が東京宝塚劇場から中継されたほか、その裏番組としてKRテレビ（現：TBSテレビ）が金鶴香水提供の年末特別番組『オールスター大行進』を開始しました。この番組も1968年まで続く、年末の風物詩の一つとなりました。

その他にも、海外ドラマ『アイ・ラブ・ルーシー』や『名犬ラッシー』、国産ドラマ『水戸黄門漫遊記』、教養番組『きょうの料理』、『ドキュメンタリー 日本の素顔』など、様々なジャンルの番組が放送され、テレビコンテンツの多様化が進みました。

カラー放送への試み

技術面では、将来の実用化を見据えた動きも始まりました。12月28日には、NHK東京放送局と日本テレビが、それぞれカラー放送の試験放送を開始しました。これはまだ実験段階でしたが、日本のテレビ放送がモノクロからカラーへと進化していく最初の一歩となりました。

1957年は、放送局の数が増え、放送エリアが拡大し、番組内容が豊かになるとともに、カラー放送への技術的な挑戦も始まった年であり、日本のテレビ放送が黎明期から成長期へと移行していく過程において、極めて重要な一年であったと言えるでしょう。

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