1957年ドイツグランプリ

1957年8月4日、ドイツグランプリはニュルブルクリンクで盛況のうちに開催されました。再舗装されたサーキットには、15万から20万人の大観衆が詰めかけ、熱気に包まれていました。

このレースは、フェラーリとマセラティの戦略対決として記憶されています。フェラーリは500kmの長丁場をノンストップで走り切る計画を立てていましたが、マセラティはタイヤ摩耗を考慮し、一度のピットストップを予定していました。マセラティ陣営は、燃料を節約して先行し、タイヤ交換と給油を同時に行うという大胆な作戦に出ました。

スタートでは、フェラーリのマイク・ホーソーンとピーター・コリンズが先行し、ファン・マヌエル・ファンジオは3番手に甘んじました。ホーソーンは2周目にコースレコードとなる9分37秒9を記録し、トップを快走します。しかし、3周目にはファンジオがフェラーリ勢を抜き去り、独走態勢に入りました。

10周を終えた時点で、マセラティのジャン・ベーラが作戦通りピットインし、タイヤ交換と給油を行いました。28秒ものリードを築いていたファンジオも12周目にピットインしますが、ここで予期せぬ事態が発生します。リアタイヤ交換と給油に手間取り、56秒もの時間をロスしてしまいました。その間にホーソーンとコリンズがトップに躍り出ます。

38秒差でコースに復帰したファンジオは、最初はペースが上がらず、フェラーリ陣営を惑わせる戦略に出ます。フェラーリはホーソーンとコリンズにペースダウンを指示しますが、ファンジオは驚異的な速さで追い上げを開始。16周目には33秒差、17周目には25秒差と着実に差を縮め、19周目には9分23秒4という好タイムで13秒差まで迫ります。

フェラーリ陣営はようやくファンジオの作戦に気づき、ホーソーンとコリンズにペースアップを指示しますが、時すでに遅し。ファンジオは20周目に予選タイムを8秒も上回る9分17秒4という驚異的なファステストラップを記録し、わずか2秒差にまで詰め寄ります。21周目のノルドカーブでコリンズを、続いてブライドシャイドでホーソーンを抜き去り、トップに立ちます。

ホーソーンは最後までファンジオに食らいつき、逆転を狙いましたが、ファンジオは冷静にミスを避け、3秒6差で劇的な勝利を掴みました。レース後、ファンジオは「こんな走りはもう二度とできないよ」と語ったと伝えられています。

この勝利は、ファンジオにとってF1における24勝目であり、生涯最高の走りと言われています。また、この勝利でファンジオは4年連続5回目のチャンピオンを獲得することになります。

このレースでは、参加台数を増やすため、復活したF2マシンも混走しました。F2マシンはポイント獲得できませんでしたが、F1出走回数にはカウントされたことが注目されます。レース結果、予選結果、そして当時のドライバーズチャンピオンシップ順位など詳細な情報は、各種資料や文献に記載されています。

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