1960年オランダグランプリ

1960年オランダグランプリ：悲劇とドラマのザントフォールト

1960年6月6日、オランダのザントフォールト・サーキット。F1世界選手権第4戦、オランダグランプリが開催されました。このレースは、若き才能の躍進と、避けられない悲劇が交錯する、記憶に残る一戦となりました。

レース前後の状況

モナコでの大クラッシュでクリフ・アリソンがシリーズから撤退。フェラーリは3台のみの参戦となり、フィル・ヒルとリッチー・ギンサーがディーノ246F1、ヴォルフガング・フォン・トリップスが新型のディーノ246Pをドライブしました。一方、ロータスはイネス・アイルランド、アラン・ステイシーに加え、後にF1レジェンドとなるジム・クラークがデビュー。クーパー、BRMは前戦と同じ体制で、アストンマーティンはロイ・サルヴァドーリを起用して今季初参戦を果たしました。その他、様々なプライベーターチームがクーパーT51やロータス18で参戦し、スターリング・モス、ブルース・マクラーレン、ジャック・ブラバムといった強豪ドライバーが名を連ねました。

ドライバーズランキングではマクラーレンがトップを走り、モス、ラスマンが続きました。コンストラクターズランキングはクーパーが首位に立っていました。

予選

モナクは6度目のポールポジションを獲得。ブラバムが僅か0.2秒差で2位につけ、アイルランドが3位に入りました。BRM勢は上位につけられず、クラークは11番グリッドからスタートすることとなりました。フェラーリ勢は後方に沈み、フロントエンジンの時代が終わったことを象徴する結果となりました。予選後には、賞金問題でいくつかのチームと主催者間で紛糾が生じました。

決勝

スタートでブラバムがモスを制し、レースをリードしました。その後ろにはロータスの3台が続き、激しいポジション争いを展開しました。4周目にブルックスがギアボックストラブルで、8周目にマクラーレンがトランスミッショントラブルで、9周目にブリストウがエンジントラブルでそれぞれリタイア。

そして、運命の瞬間が訪れます。5周目、ダン・ガーニーがブレーキトラブルでコースアウト、マシンは観客エリアに侵入し、観客2人が死亡するという痛ましい事故が発生しました。ガーニー自身は奇跡的に無傷でした。この事故は、1960年シーズンの暗い影を落とす始まりとなりました。

事故後もレースは続き、クラークは順位を上げ、アイルランド、ステイシーに続く5位に浮上しました。しかし、ブラバムは17周目に縁石でダメージを受け、モスはパンクによりピットインを余儀なくされました。その後、ロータスの3台やグラハム・ヒルが順位を上げていきます。

レース終盤には、トランティニアン、クラーク、ヒル、ボニエ、ステイシーが相次いでリタイア。最終的に、ブラバムが全ラップをリードして優勝しました。アイルランドが2位、グラハム・ヒルが3位に入り、初の表彰台を獲得。モスは4位、フォン・トリップスとギンサーがフェラーリ勢でポイントを獲得しました。

結果とランキング

ブラバムの勝利は、彼のシーズン5連勝の始まりとなりました。クーパーにとってはオランダでの唯一の勝利でした。ファステストラップはモスが記録しました。ドライバーズランキングではマクラーレン、モスは順位変わらず、ブラバムが4位、アイルランドが5位に浮上。コンストラクターズランキングではクーパーがリードを広げました。

このレースは、ジム・クラークの華々しいデビュー、ブラバムの圧倒的な勝利、そして二度と繰り返してはならない悲劇を同時に刻んだ、F1史に深く刻まれた一戦となりました。 観客の安全確保の重要性を改めて考えさせられる、痛ましい出来事でもありました。

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