1961年モナコグランプリ

1961年モナコグランプリ：新時代の幕開けとモスの勝利

1961年5月14日、モナコグランプリが開幕しました。このレースは、F1世界選手権の歴史において重要な転換点となりました。1958年末、FIAはエンジンの最大排気量を従来の2.5Lから1.5Lに引き下げるレギュレーション変更を発表したのです。この変更は、イギリスのF1チームに大きな衝撃を与えました。

それまで、クーパー、ロータス、BRMといったイギリス勢は2.5Lエンジンで大きな成功を収めており、F1界を席巻していました。そのため、彼らにとって2.5Lエンジンの存続は当然のことと考えていました。しかし、1.5Lへの変更は、彼らの予想をはるかに超えるものでした。一方、フェラーリは早々と1.5Lエンジンへの対応を進めており、新型ミッドシップマシン「156」を投入するなど、準備万端で臨んでいました。

急なレギュレーション変更に、イギリス勢は対応に追われました。幸いなことに、1957年から1960年までのF2規定が最大排気量1.5Lだったため、旧型のF2マシンとクライマックスFPFエンジンを改良して使用するなど、急場しのぎの策を講じました。しかし、それでもパワー不足は否めませんでした。スターリング・モスは、ロータス18のサイドパネルを外して軽量化を図るなど、必死の努力を続けました。

予選では、新たな方式が採用されました。ワークスチームの主要ドライバー2名と、過去のモナコGP優勝者には決勝進出が保障されました。残りの枠は、練習走行のタイムで争われました。ポールポジションを獲得したのは、スターリング・モスでした。一方、インディ500との掛け持ちで参戦したジャック・ブラバムは最下位タイムとなり、最後尾からのスタートとなりました。

決勝レースは、リッチー・ギンサーが好スタートを切りました。しかし、モスは徐々に差を広げ、14周目にはギンサーを抜き去り、トップに立ちました。その後も、モスは着実にリードを広げていきます。しかし、フィル・ヒルとヨアキム・ボニエが猛追し、終盤は手に汗握る展開となりました。ギンサーも強力なフェラーリ156で追い上げを見せますが、モスは最後まで冷静に走り切り、優勝を手にしました。

このレースは、1.5Lエンジン時代におけるモスの最初の勝利であり、彼の卓越したドライビングテクニックを示すものとなりました。また、イギリス勢とフェラーリの技術開発競争の幕開けでもありました。モナコグランプリは、F1の歴史に新たな1ページを刻んだのです。

エントリーリストと結果: 詳細なエントリーリストと予選、決勝の結果については、文献を参照ください。また、ラップリーダー、最終ランキングなども文献に記載されています。

参考文献:
* 林信次『F1全史 1961-1965』ニューズ出版、1997年。ISBN 4-938495-09-0。

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