1962年イタリアグランプリ

1962年イタリアグランプリ：BRMの栄光とドラマの舞台裏

1962年9月16日、イタリア・モンツァ・サーキット。前年発生した大惨事を受け、バンクセクションを使用せず、ロードコースのみで開催された第7戦イタリアグランプリは、BRMチームにとって歴史的な一日となりました。

予選ではジム・クラーク（ロータス）がポールポジションを獲得しましたが、チームは深刻な問題を抱えていました。スペアパーツが不足しており、ギアボックスの状態が不安定だったのです。この不安は現実のものとなり、クラークは12周目にトランスミッショントラブルでリタイア。チームメイトのトレバー・テイラーも同様のトラブルで25周でレースを終えました。

一方、予選2位だったグラハム・ヒル（BRM）は、チームメイトのリッチー・ギンサーを大きく引き離し、独走態勢でレースを展開。ギンサーはジョン・サーティース（フェラーリ）と激しい2位争いを繰り広げましたが、サーティースは38周目にスローダウンし、5周後にエンジントラブルでリタイア。ギンサーは2位でフィニッシュし、BRMは初のワンツーフィニッシュを達成しました。

レース中盤以降は、ダン・ガーニー（ポルシェ）、ブルース・マクラーレン、トニー・マグス（共にクーパー）による三つ巴のバトルが展開されました。40周目のストレートでは3台がほぼ横並びになるという迫力あるシーンも。マグスは大型燃料タンクを搭載したマクラーレンと違い燃料補給が必要となり、ピットイン。順位を大きく落としてしまいました。

3位争いは、新たなノーズ仕様のフェラーリを駆るウィリー・メレス、ヨアキム・ボニエ、ジャンカルロ・バゲッティらが加わり、最後まで混戦が続きました。ガーニーは66周目にリアデフの故障でリタイア。バゲッティは地元イタリアの期待を背負い、一時3位に浮上するもスピンで順位を落とします。ボニエはクラッチトラブルで後退、最終的にはバゲッティが5位でフィニッシュ。メレスとバゲッティにとってこのレースがF1での最後の入賞となりました。

最終ラップの最初のカーブ。マクラーレンはメレスを僅か0.4秒差でかわし、3位表彰台を獲得。スターリング・モスは、このマクラーレンの3位入賞を予言していたという逸話も残っています。フィル・ヒルはエンジントラブルで大きく順位を落とし、リカルド・ロドリゲスは油圧喪失、イネス・アイルランドはステアリングトラブルでそれぞれリタイア。マステン・グレゴリーはオーバーヒートにより最終ラップは4速のみで走行するなど、多くのマシンがトラブルに見舞われました。

レース前には、ロイ・サルヴァドーリのローラが練習走行中に消火器が爆発するアクシデントも発生。様々なドラマが凝縮された、記憶に残る1962年イタリアグランプリとなりました。タイヤは全車ダンロップを使用。予選通過ラインは2位だったグラハム・ヒルのタイムの110％である1分50秒42でした。優勝したグラハム・ヒルは全86周をトップで走りきりました。

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