1962年ビルマクーデター

1962年3月2日、ビルマ連邦で国軍最高司令官ネウィンによる軍事クーデターが発生し、文民政権のウー・ヌ内閣が打倒されました。これによりネウィンは権力を掌握し、その後の26年に及ぶ軍事独裁体制はビルマの政治経済に長期的な停滞をもたらす大きな転換点となりました。

ビルマは1948年に独立後、反乱勢力や党派対立による政治的不安定が続きました。1958年には軍のクーデター計画察知を機に一時軍政が敷かれ、1960年総選挙でウー・ヌが復帰するも政権運営は困難を極めました。仏教国教化の失敗、経済政策の迷走に加え、パンロン協定10年を経て民族州が自治拡大を要求。軍部は連邦崩壊の危機感を抱き、特に憲法で離脱権がある州を国家統合への脅威と認識。冷戦下での外国勢力介入による対立巻き込みも懸念しました。軍は連邦制/議院内閣制を脆弱、多党制を腐敗と批判し、強力な中央集権を必要と考えました。

1962年3月2日、クーデターが実行され、ネウィン率いる革命評議会が権力を掌握。憲法と議会は廃止され、ウー・ヌ首相ら閣僚や民族指導者約30名が逮捕されました。無血とされる一方、元大統領の息子射殺など犠牲者も出ています。軍の組織的関与度には研究者で評価の差がありますが、軍の組織力とネウィンの個人要因が影響したと見られます。当時の国民は不安定なウー・ヌ政権に不満があり歓迎する向きもありましたが、ラングーン大学の学生は抵抗。7月7日、軍が武力鎮圧し多数の学生が死亡しました。

クーデター後、当初国内外からの抗議は少数でしたが、ネウィン政権下の政策が社会を大きく変容させました。1962年にビルマ社会主義計画党（BSPP）を結成、1964年には他の全政党を禁止し一党独裁に。少数民族の権利は制限され、新たな武装組織が出現。政権批判は禁じられ、司法、教育、文化、メディアは政府管理下に。経済面では外資/私企業が国有化され社会主義経済へ移行も、急速に低迷。1970-80年代の危機を経て1987年には後発開発途上国に認定されました。

ネウィン政権下の26年間は、ビルマの経済・民主的発展を大きく阻害し、1988年の全国規模の民主化運動（8888民主化運動）へと繋がる歴史的背景となりました。

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