1964年のラジオ (日本)

1964年は、日本のラジオ放送にとって、技術的な進展と番組ラインナップの拡充が同時に進行した重要な一年でした。特に、FM放送の全国的な整備とステレオ放送の本格的な展開が目覚ましい進歩を遂げました。

NHK-FMは、この年、全国各地で次々と放送を開始し、ネットワークを大幅に広げました。2月4日には、大阪と名古屋において、パッケージされたテープを送付し再生する方式による全国向けステレオ放送が始まりました。4月1日には静岡、岡山、山口、高知で新たにFM放送を開始し、静岡と岡山では同時にステレオ放送もスタート（山口、高知は4月6日開始）。さらに、4月6日には札幌、仙台、広島、松山、福岡、熊本でも同様のテープ送出方式によるステレオ全国放送が始まり、これにより、それまでステレオ放送が行われていなかった全てのFM局でステレオ放送が可能となりました。これ以降、沖縄および奄美地域を除くNHK-FMの新規開局は、この形態を踏襲し、ステレオ放送も同時に開始することとなりました。この年の5月1日には北九州と長崎、6月1日には盛岡と秋田、6月25日には旭川、7月1日には福島、新潟、長野、富山、金沢、松江、宮崎、鹿児島、そして12月24日には函館、室蘭、帯広、青森、山形、鳥取といった多くの地域で新たにFM放送が聴取できるようになりました。

一方で、AM放送におけるステレオ方式の実験は、この年をもって終了しました。文化放送とニッポン放送が共同で放送していた、AMのモノラル2波を利用した立体放送の帯番組「パイオニア・イブニング・ステレオ」は6月19日に放送を終えました。また、TBSがAFM方式というAM1波を使ったステレオ実験放送として提供していた番組「ラテン・リズムをどうぞ」も、同局が再免許申請を行わなかったため、6月28日をもって終了。これに伴い、TBSによるAMステレオ実験放送自体も幕を閉じました。

番組編成においては、多くの放送局で多様な新番組が開始されました。特にNHKラジオ第1放送では、4月の大規模な改編を中心に、以下のような多数の新番組が登場しました。

時の話題
みんなたのしく
ピッポピッポボンボン
こんどはうたよ
私のダイヤル
話題を結ぶ
午後の散歩道
あなたとお茶を
ポピュラーミュージックアワー
全国音楽めぐり
虹の物語
今晩は大阪です
百万の太陽
芸界夜話
花のパレード
芸能ステージ
邦楽百選
現代に生きる
みんなの民謡
楽天くらぶ
政治の動き
歌謡ホール
こども会議
日曜訪問
三人のジョッキー
青少年レコードコンサート
日曜軽音楽ホール
報道特集
日曜ライブラリー
スポーツアワー
落語百扇
演芸独演会

その他の放送局でも新番組が始まりました。STVラジオでは「Date with Tom & Dick」などが、ラジオ沖縄では「シャープと共に」、ニッポン放送では「わたしはディスクジョッキー」、大阪放送では「OBCミュージックナイター」などが開始されました。東京放送では「全国こども電話相談室」といった長寿番組もこの年にスタートしています。NHK-FMではステレオ放送番組として「夕べのステレオ」が登場しました。

終了した番組としては、NHKラジオ第1放送の「話の泉」などが挙げられます。

また、この年には放送局の名称変更もあり、10月には京都放送の商号が近畿放送に変更されました。

総じて1964年は、FM放送の全国ネットワークが急速に拡大し、ステレオ放送が普及段階に入った技術的な節目であり、同時に各局が様々なジャンルの新番組を投入し、日本のラジオ放送が更なる発展を目指した一年と言えるでしょう。

もう一度検索