1964年自由民主党総裁選挙

1964年自由民主党総裁選挙

1964年7月10日に実施された自由民主党の総裁選は、池田勇人の任期満了を受けて行われました。池田は当時、党内での安定を求めて三選を目指す中で、佐藤栄作や藤山愛一郎といった政敵との接戦に臨むことになりました。

この選挙の背景には、池田の出馬を阻む試みがあったことが指摘されています。特に、佐藤派からの禅譲を狙った動きがありましたが、池田はこれを拒絶し、両者の直接対決に至りました。池田は早期に過半数を獲得し、選挙戦の安定を目指しましたが、佐藤は藤山派と連携して決選投票に持ち込もうと試みました。

選挙戦中には多くの内幕や隠語が飛び交いました。例えば、「生一本」は所属派閥に従うことを指し、「ニッカ」や「サントリー」は二つまたは三つの派閥からの支持を受けることを表します。また、「オールドパー」は様々な派閥からの支持を受けつつも、最終的な投票先が不透明であることを意味しました。これらの言葉は、派閥の複雑な駆け引きを反映しています。

池田派と佐藤派の保守本流同士の争いは、予想以上の接戦となりました。特に佐藤陣営は、党内の派閥を越えて支持を獲得しようと活発に動きました。一方、メディアは池田優勢の報道を続け、これが議員たちに「勝ち馬に乗る」心理を働かせる要因となっていきました。選挙前日に報じられた池田の「圧勝」というニュースは、佐藤陣営にとって大きな心理的ダメージとなりました。

佐藤陣営の敗因として、福田赳夫は以下のポイントを挙げています。第一に、メディアの情勢報道が池田を有利にしたこと、第二に、佐藤と藤山派との連携が十分ではなかったこと、第三に、池田派に内部分裂の隙を与えたことが影響しています。

池田陣営の中では、田中角栄が特に興味深い動きを見せました。彼は元々佐藤派でありながら、池田とは親しい関係にありました。佐藤は田中の微妙な立場に気づいており、田中に触れないようにしていたと言われています。田中がもっと積極的に支持した場合、佐藤が勝利した可能性もあったとされています。

また、大野伴睦という重要な存在が池田にとって鍵となり、彼の支持を得ることがカギとなりました。しかし、選挙の直前に大野が脳溢血で倒れたため、池田は大きな打撃を受けました。大野派は池田と佐藤のどちらを支持するかで意見が分かれており、これも選挙戦を複雑にしました。

選挙結果とその後

最終的には、池田は60票以上の得票を得て総裁としての3選を果たしましたが、その勝利はわずか4票の差であり、池田陣営は危機感を抱いたことでしょう。池田は決戦前の見込みよりもはるかに少ない票差での勝利に愕然とし、佐藤陣営は逆転の計を誤ったことに落胆の色を見せました。

総裁選後、池田は体調を崩し、入院を余儀なくされると、がんが見つかりました。彼はこの病状を明かされることなく、10月の東京オリンピック閉会式の翌日に内閣総辞職を表明しました。

その後の自由民主党では、再度の総裁選を避けたいという声が高まる中、池田の後継者として佐藤が指名され、正式に党首となることが決まりました。

この選挙は、派閥間の力関係やメディアの影響、そして個々の政治家の濃密な人間関係などが絡み合った結果、自由民主党の歴史に名を刻む重要な出来事となりました。

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