1967年メキシコグランプリ

1967年メキシコグランプリ：ハルム、初の栄冠を掴む

1967年10月22日、メキシコのシウダ・デポルティーバ・マグダレナ・ミクスカで開催されたF1世界選手権最終戦、メキシコグランプリ。このレースは、チャンピオンシップ争いの行方を決定づける、シーズンを締めくくる重要な一戦でした。

優勝したのはロータスのジム・クラーク。しかし、彼の勝利は容易なものではありませんでした。レース中盤からクラッチトラブルに見舞われながらも、2位のジャック・ブラバムに1分以上の差をつける圧勝劇を演じました。

しかし、このレース最大の注目点は、チャンピオンシップ争いでした。タイトル争いは、ブラバムチームのジャック・ブラバムとデニス・ハルムの両ドライバーの手に握られていました。チームメイト同士によるチャンピオン争いは、1961年のフェラーリ以来6年ぶりのことでした。最終戦を迎える時点で、ハルムはブラバムに5点のリードをつけていました。

ハルムがチャンピオンを獲得するには、4位以上に入賞すれば十分でした。一方、ブラバムは優勝し、かつハルムが5位以下に終わるという、非常に厳しい条件をクリアする必要がありました。

予選と決勝：予想外の展開

予選では、速さでは定評があるものの、信頼性に欠けるロータス49を駆るクラークがポールポジションを獲得。フロントローにはクリス・エイモンが並びました。チャンピオンシップを争うブラバム勢は、ブラバムが5番手、ハルムが6番手という位置づけでした。

決勝レースは、スタート直後から波乱の展開となりました。ガーニーがクラークのリアに接触するアクシデントが発生。クラークのマシンは排気管が曲がる程度の軽微な損傷にとどまりましたが、ガーニーはリタイアを余儀なくされました。クラークはその後、エイモンやチームメイトのヒルを抜き去り、レースをリード。クラッチトラブルにもかかわらず、独走態勢を築きました。しかし、ヒルはドライブシャフト故障でリタイア。これにより、ブラバムは3位に浮上しましたが、ハルムがそのすぐ後ろを走っていたため、逆転優勝によるチャンピオン獲得の可能性は低くなりました。

レース終盤には、2位を走っていたエイモンが燃料不足に陥り、一時マシンを降りてリタイアを検討する場面もありました。しかし、燃料ポンプから音が聞こえたため急いでマシンに戻りレースを続行。その間にブラバム、ハルム、サーティースに抜かれ5位に順位を落としました。そして、最終ラップは計測不能なタイムでフィニッシュし、9位に終わりました。

一方、ホンダのサーティースは、安定した走りで4位に入賞。ホンダRA300はデビュー3戦目でしたが、初期のトラブルを克服し、高いパフォーマンスを示しました。しかし、シャシーの剛性不足という欠点は克服できず、クラークやブラバム勢には及ばない結果となりました。

ハルム、初戴冠と移籍

ハルムは、今シーズンの活躍により、51ポイントを獲得。モナコGPとドイツGPでの優勝、そして他のレースでの安定した入賞によって、有効ポイント46点（総獲得ポイント48点）のブラバムを退け、見事F1ドライバーズチャンピオンの座を獲得しました。しかし、この栄冠の裏には、シーズン終了後のチーム離脱という現実も待っていました。ハルムは翌シーズン、マクラーレンへ移籍しました。

サーティースは20ポイントを獲得しドライバーズランキング4位。ホンダもコンストラクターズランキング4位となり、フェラーリ、BRM、イーグルといった強豪チームを抑える活躍を見せました。

このメキシコグランプリは、クラークの圧勝、ハルムの初戴冠、そして各チームの技術力や戦略が複雑に絡み合った、非常にドラマチックなレースとなりました。その興奮と感動は、多くのF1ファンに今も語り継がれています。

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