1967年モナコグランプリ

1967年モナコグランプリ：ハルムの勝利と悲劇の影

1967年5月7日、モナコグランプリがモンテカルロ市街地コースで開催されました。このレースは、デニス・ハルムのF1初優勝と、悲劇的な事故によって記憶されることとなります。

レース前の状況

前戦南アフリカグランプリから4ヶ月のインターバルを経て開催されたモナコグランプリ。この期間には、ダン・ガーニーが優勝したレース・オブ・チャンピオンズや、マイク・パークスが勝利したBRDCインターナショナル・トロフィーなど、いくつかの非選手権レースが行われていました。

17台のF1マシンに加え、台数不足を補うためF2のマトラも参戦が許可されました。モナコのタイトなコースレイアウトでは、3リッター車の優位性は低く、多くのチームが2～2.8リッター車で参戦しました。ホンダはRA273の軽量化を行い、2年ぶりにモナコGPに参戦。イーグルはウェスレイクV12エンジンを初めてモナコに持ち込みました。フェラーリは新型312/67を投入、ロレンツォ・バンディーニ、ルドヴィコ・スカルフィオッティ、マイク・パークス、そして若手クリス・エイモンを擁する強力な布陣で臨みました。マクラーレンはBRMのV8エンジンを搭載したM4Bを使用しました。

予選

ジャック・ブラバムがポールポジションを獲得しました。平均時速は80.779 mph (130.001 km/h)。2番手はバンディーニ、3番手はサーティース、4番手はハルムという結果でした。予選通過台数は16台に制限され、少なくとも3年間F1マシンを製造していたメーカーには自動的に決勝への出走権が与えられました。ペドロ・ロドリゲスは予選最下位でしたが、クーパーの決勝進出権により最後尾グリッドからスタートしました。イーグルに移籍したリッチー・ギンサーは予選落ちし、これが彼のF1キャリアの最後となりました。

決勝

スタート直後から波乱の展開となりました。バンディーニが一時リードしましたが、ブラバムのエンジンがブローしオイルを撒き散らし、多くのドライバーがスピンを喫しました。ハルムとスチュワートがバンディーニを抜き去りトップ争いを展開。スチュワートは一時首位に立ちましたが、マシントラブルでリタイア。ハルムが再びリードを奪いました。サーティースもエンジントラブルでリタイア。バンディーニが2位、マクラーレンが3位に浮上しました。クラークは順位を上げていましたが、マシントラブルでリタイア。エイモンが4位に浮上しました。

レース後半、バンディーニはハルムに迫り始めました。しかし、82周目、バンディーニはシケインでコースアウト。マシンは炎上し、バンディーニはマシン下に閉じ込められました。救助活動は遅れ、ヘリコプターのローター・ブレードからの下降気流によって火災は再燃しました。ハルムは最後までリードを保ち優勝。しかし、バンディーニの事故がレース全体の影を落としました。エイモンはタイヤパンクにより3位に後退、ヒルが2位となりました。

レース後の影響

バンディーニは重傷を負い、3日後に死亡しました。この事故は、モナコGPにおけるわら俵の使用禁止、耐燃性燃料システムや耐火性レーシングスーツの開発加速、ヘリコプターによる低空飛行の禁止など、F1の安全対策強化に繋がりました。また、イタリア人ドライバーの起用に消極的になったエンツォ・フェラーリにも大きな影響を与えました。この事故は、F1の歴史における痛ましい出来事として、今もなお記憶されています。100周で行われた最後のモナコGPでもありました。

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