1968年のロードレース世界選手権

1968年FIMロードレース世界選手権：激動のシーズン

1968年のロードレース世界選手権は、数々の出来事が歴史に刻まれた、激動のシーズンでした。まず、日本のメーカーであるホンダとスズキがグランプリから撤退するという衝撃的な発表がありました。ホンダは前年チャンピオンのマイク・ヘイルウッドにマシン提供を提案するも、ヘイルウッドは引退を選択。スズキは50ccクラスのチャンピオン、ハンス＝ゲオルグ・アンシャイトに前年型マシンを使用することを許可しました。

ワークス撤退は、各クラスの戦力図に大きな影響を与えました。特に、500ccクラスではホンダの強力な4気筒マシンが不在となり、MVアグスタのジャコモ・アゴスチーニの独壇場となりました。アゴスチーニは全10戦全勝という圧倒的な強さで、3年連続のタイトルを獲得しました。2位以下を大きく引き離す圧倒的な速さで、その強さを証明しました。マン島TTでは前年のヘイルウッドのコースレコードには届かなかったものの、2位に8分以上の差をつける圧勝劇を演じました。

350ccクラスでもアゴスチーニの独走状態は続き、全7戦全勝でタイトルを獲得。1人のライダーが350ccと500ccの両クラスで全戦全勝を記録したのは、1959年のジョン・サーティース以来のことでした。ベネリやアエルマッキなどのワークスチームも挑戦しましたが、アゴスチーニの壁を破ることはできませんでした。

250ccクラスは、ヤマハのフィル・リードとビル・アイビーによるチームメイト同士の激しい争いが大きな話題となりました。ヤマハは、125ccクラスではリードを、250ccクラスではアイビーをそれぞれチャンピオンにするというチームオーダーを出していました。しかし、リードは125ccクラスのタイトル獲得後、250ccクラスでも勝利を目指し、アイビーを抜き去り、最終的に両者は同ポイントでシーズンを終えました。全てのレースタイムの合計でリードが僅差で勝利し、タイトルを獲得しました。この出来事が、アイビーの4輪レース転向という決断に繋がったといわれています。

125ccクラスもリードとアイビーによるヤマハワークス同士の争いでしたが、アイビーはチームオーダーに従いリードをサポート。リードは順調に勝利を重ね、チェコスロバキアGPでタイトルを決定づけました。

50ccクラスでは、ホンダとスズキの撤退によって、デルビ、クライドラー、ヤマティなどのヨーロッパメーカーが台頭してきましたが、アンシャイトが駆るスズキの前年型ワークスマシンRK67の強さは健在でした。アンシャイトは3勝を挙げ、3度目のタイトルを獲得。しかし、翌年からレギュレーション変更により2気筒マシンが使用不可となるため、このタイトルをもってグランプリから引退することになりました。このクラスでは、マン島TTで3位となったレスリー・グリフィスが、54歳というグランプリ表彰台最年長記録を樹立しました。

1968年シーズンは、メーカーの撤退、レギュレーション変更、そしてライダーたちの熾烈な争いなど、数々の出来事が織りなす、まさに激動のシーズンでした。このシーズンは、モーターサイクルレースの歴史に大きな足跡を残したと言えるでしょう。

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