1969年のラジオ (日本)

1969年の日本のラジオ界：FMの胎動と番組の転換

1969年は、日本のラジオ放送が未来に向けた重要な一歩を踏み出した記念すべき年と言えるでしょう。特にFM放送が本格的な普及に向けて動き出し、番組編成においても多彩な変化が見られました。

この年の最も大きな出来事の一つは、3月1日にNHK-FM放送が本放送を開始したことです。これにより、それまでの実験放送という位置づけから、公共放送としてのFMサービスが全国展開への道を歩み始めました。高音質で多様なジャンルの音楽を提供できるFM放送は、その後のラジオ文化に大きな影響を与えていくことになります。

さらに年末の12月24日には、日本の放送史において画期的な出来事が起こりました。営利事業者としては初めてとなる民間FM放送局、「愛知音楽エフエム放送」（現在のエフエム愛知）が名古屋で開局したのです。これは、その後に続く全国各地での民間FM局設立の先駆けとなり、FM放送がリスナーにとってより身近な存在となる大きな一歩となりました。

技術面での新たな試みも行われました。9月29日には、FM東海とNET（現在のテレビ朝日）が共同で、テレビ番組の映像と、対応する音声をステレオでFM放送するという、民放としては初めての連携放送を実施しました。これは、メディア間の連携による新しい放送スタイルの可能性を示すものでした。

番組編成においても、この年は大きな節目となりました。長年多くのリスナーに親しまれてきた番組がその歴史に幕を下ろす一方、新しい時代のニーズに応える番組が数多く誕生しています。文化放送では、1952年の開局以来17年半にわたって放送され、深夜放送の草分けとして音楽ファンに愛された看板番組『S盤アワー』が10月1日に終了し、一つの時代が終わりを迎えました。

その一方で、新しいスタイルの番組も続々とスタートしています。TBSラジオでは、10月6日から『毒蝮三太夫のミュージックプレゼント』が放送を開始しました。これは、パーソナリティが地域に出向いてリスナーと直接触れ合う公開放送形式の番組として、放送開始以来半世紀以上にわたって続く長寿番組となり、地域密着型番組の一つのモデルとなりました。また、朝日放送では11月9日に、ラジオ番組としては異例の長時間生ワイド番組『東芝ワイドワイドサンデー〜あなたとつくる365分〜』が始まりました。およそ6時間にわたるこの番組は、リスナーからの電話やハガキを受け付けながら進行するスタイルで、長時間生放送の可能性を追求しました。

このほかにも、1969年には多様な新番組が誕生しています。ニッポン放送では深夜放送の代表格である「オールナイトニッポン」シリーズに『高嶋ひでたけのオールナイトニッポン』や『亀渕昭信のオールナイトニッポン』が登場するなど、深夜放送の勢いが増しました。文化放送の『セイ!ヤング』やRKB毎日放送の『スマッシュ!!11』など、若者層をターゲットにした音楽・トーク番組が多く企画されています。また、朝の時間帯には、毎日放送の『お早うダイワボウです〜お早う浜村淳です〜』のように、ニュースや生活情報を交えたワイド形式の番組が開始されています。終了した番組としては、ニッポン放送の『ザ・パンチジャーナル』や『陳平・花の予備校』などが挙げられます。

組織面では、6月1日にラジオ栃木が商号を栃木放送に変更しています。

総じて1969年は、NHK-FMの本放送開始と初の民間FM開局という、FM時代の幕開けを告げる年であると同時に、長寿番組の終了と新しいスタイルの番組の誕生という、番組編成の面でも大きな転換期となった、日本のラジオ放送史において非常に重要な一年でした。

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