1969年モナコグランプリ

1969年モナコグランプリ：伝説の最終章

1969年5月18日、モナコグランプリがモンテカルロ市街地コースで開催された。このレースは、数々の名ドライバーやチームにとって、F1の歴史に名を残す重要な転換点となった。

予選：ウィング規制導入と激戦

前戦スペインGPでのアクシデントを受け、FIAは大型ウィングの高さ制限を決定。多くのチームが慌ててウィングの調整を余儀なくされた。この混乱の中、マトラのジャッキー・スチュワートがポールポジションを獲得。クリス・エイモン（フェラーリ）、ジャン＝ピエール・ベルトワーズ（マトラ）、グラハム・ヒル（ロータス）らがトップグリッドに名を連ねた。

決勝：ドラマチックな展開とヒルの栄光

スタートからスチュワートがトップを快走。しかし、中盤以降は予想外の展開が待っていた。サーティースとブラバムの接触、エイモンとベルトワーズのリタイア、そして首位を走っていたスチュワートまでもがドライブシャフトの故障で脱落した。

これらのアクシデントにより、4番グリッドからスタートしたグラハム・ヒルがトップに躍り出た。ヒルは、2位を争うイクスとカレッジを大きく引き離し、見事な走りで優勝を掴んだ。この勝利は、ヒルにとって通算14勝目、モナコGP5勝目であり、F1最後の勝利となった。

ヒルが「ミスター・モナコ」と呼ばれる所以は、まさにこの圧倒的なモナコでの強さにあった。2位にはフランク・ウィリアムズ・レーシングカーズのピアス・カレッジ、3位にはジョー・シフェールが入賞した。

時代の終わり：クーパーとマセラティのラストラン

このレースは、名門チームとエンジンサプライヤーにとってのF1最終レースでもあった。1959年と1960年のコンストラクターズチャンピオンであるクーパーは、アンティーク・オートモビルズによって最後のレースに参戦。マセラティエンジンも、このモナコGPをもってF1の舞台から姿を消した。

レグ・パーネル・レーシングもまた、このレースをもってF1から撤退。時代を築き上げた名門チームとエンジンの終焉は、多くの関係者に惜しまれつつ幕を閉じた。

まとめ

1969年モナコグランプリは、グラハム・ヒルの華麗なる勝利、そしてクーパーやマセラティといったF1の歴史に名を残すチームのラストランという、象徴的なレースとなった。ウィング規制導入による予選の展開や、決勝での上位陣のまさかのリタイア劇は、F1の歴史に深く刻まれた。このレースは、新たな時代への移行を象徴する、記憶に残る一戦だったと言えるだろう。

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