1970年オーストリアグランプリ

1970年オーストリアグランプリ：フェラーリの快挙とリントの涙

1970年8月16日、オーストリアのエステルライヒリンクでF1世界選手権第9戦、1970年オーストリアグランプリが開催されました。このレースは、60周にわたる激戦となり、ドラマチックな展開で多くの観客を魅了しました。

新コースとエントリーリスト：期待と不安の入り混じる開幕

オーストリアGPは、1964年以来、ツェルトベク飛行場以来2回目の開催となりました。6年ぶりに開催されるオーストリアGPは、ツェルトベク飛行場の北側に新設されたエステルライヒリンクで行われました。高速コーナーと起伏の多いコースは、ドライバーたちに高い技術と勇気を要求しました。

エントリーリストには、いくつかの注目すべき点がありました。フェラーリは3台体制で参戦、レガツォーニとギュンティがともにフル参戦を果たしました。ウィリアムズはレッドマンの代わりに新人のシェンケンを起用。一方、ウォーカーチームはロータス72の準備が間に合わずヒルは欠場、クラッベチームもエンジントラブルのためピーターソンは出場できませんでした。

予選：地元英雄リントのポールポジションも…

予選日は悪天候に見舞われ、金曜日のタイムで順位が決定しました。地元オーストリアの英雄、ヨッヘン・リントがポールポジションを獲得し、多くの観客の期待を集めました。しかし、チームメイトのマイルズがブレーキシリンダーのトラブルに見舞われ、ロータスの信頼性に疑問符が付く結果となりました。フロントローには、リントと共に好調なフェラーリのレガツォーニが並びました。イクスは3番手、スチュワートと並び2列目、ギュンティは5番手、エイモンと並び3列目となりました。

決勝：フェラーリの完全勝利とリントの無念

決勝日には10万人を超える大観衆が集まりました。多くの観客はリントの優勝を期待していましたが、レースは彼らの期待を裏切る展開となりました。スタート直後、レガツォーニがトップに立ち、イクスもリントをパスしてフェラーリが1-2体制を築きました。しかし、リントはエンジントラブルで早々にリタイアを余儀なくされました。その後は、イクスとレガツォーニがレースを支配。ベルトワーズが3位を走行していましたが、終盤に燃料トラブルに見舞われ、シュトメレンとBRMのドライバーに抜かれてしまいました。

イクスとレガツォーニはシュトメレンに1分半以上の差をつけて、フェラーリが1-2フィニッシュを飾りました。イクスは今季初勝利、レガツォーニとシュトメレンはそれぞれ初の表彰台を獲得しました。ギュンティは序盤4位を走行していましたが、タイヤトラブルで順位を落とし7位に終わりました。12気筒エンジン勢が上位を独占し、DFVエンジンの独走状態を崩す結果となりました。

チャンピオンシップ：順位変動も首位争いは変わらず

ドライバーズチャンピオンシップでは、首位のリントがリタイアしたものの、ブラバムも無得点に終わったため、両者の差は20点のまま維持されました。コンストラクターズチャンピオンシップでは、ロータスが首位をキープしました。ブラバムはシュトメレンの活躍でポイントを伸ばし、マーチと並んで2位に浮上しました。フェラーリも順位を上げ、マクラーレンとの差を縮めました。

1970年オーストリアグランプリは、フェラーリの圧倒的な勝利、リントの無念、そして12気筒エンジンの復活劇と、多くのドラマを生んだレースとしてF1の歴史に刻まれました。イクスの平均速度は208.035km/hを記録しました。ファステストラップはレガツォーニとイクスの両者によって記録されました。レースの大部分はイクスがリードしました。このレースの結果は、ドライバーズ、コンストラクターズ両選手権に大きな影響を与えました。

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