1972年のラジオ (日本)

1972年の日本のラジオ界

1972年の日本のラジオ放送は、社会的な大きな変化が放送界にも影響を与えた、まさに節目の年となりました。特に、長らく米軍統治下にあった沖縄が日本に返還されたことは、現地の放送局の在り方や全国的な呼出符号（コールサイン）の再編に直接つながる重要な出来事でした。また、技術的な側面では、周波数の単位表示が国際的な基準へと変更されるなど、現代につながる変化も見られました。番組編成においても、聴取者のニーズに応える形で多くの新しい番組が始まり、一部の番組がその歴史に幕を下ろしています。

沖縄の本土復帰と放送網の再編

5月15日の沖縄本土復帰は、沖縄のラジオ局にとって大きな転換点となりました。まず、それまで公共放送的な役割を担っていた沖縄放送協会（OHK）が、日本の公共放送であるNHKの組織の一部となり、NHK沖縄放送局が誕生しました。これにより、6月25日にはNHK沖縄放送局でラジオ第1放送が再開され、同時にラジオ第2放送も新たに開始されました。NHK沖縄放送局は、かつて戦前に東京中央放送局が使用していた「JOAP」という呼出符号を引き継ぐことになり、これに伴い、既存のNHK放送局の呼出符号の一部に変更が生じました。NHK前橋放送局は「JOAP」から「JOTP」に、NHK京都放送局のFM放送は「JOTP」から、既にラジオ第1や総合テレビで使用されていた「JOOK」へと変更されました。

沖縄の民間放送局も、本土復帰により呼出符号が日本式のものへと変わりました。琉球放送は日本語放送が「KSAR」から「JORR」に、英語放送が「KSBK」から「JORO」に変更。極東放送は日本語放送が「KSDX」から「JOTF」に、英語放送が「KSAB」から「JOFF」へと変わり、中国語放送は廃止されました。ラジオ沖縄も「KSDT」から「JOXR」に変更されました。

さらに、沖縄の民放局は日本の主要なラジオネットワークへの加盟も進めました。琉球放送はTBSラジオをキー局とするJRN（Japan Radio Network）に、ラジオ沖縄は文化放送・ニッポン放送をキー局とするNRN（National Radio Network）にそれぞれ正式に加盟し、全国的な番組交流や共同企画への参加が可能となりました。

一方、極東放送では、FEBC（Far East Broadcasting Company）によって行われていた宗教放送のうち、中国語放送に加えて日本語放送も廃止されました。日本語によるキリスト教放送の受け皿とするため、12月15日には日本法人である財団法人極東放送が設立されています。

周波数単位の変更と送信能力の向上

1972年7月1日には、日本国内で改正計量法が施行されたことにより、放送を含む様々な分野で使用されていた周波数の単位が変更されました。これまでの「キロサイクル」(kc)や「メガサイクル」(Mc)といった単位が、「キロヘルツ」(kHz)や「メガヘルツ」(MHz)という国際的な単位へと改められました。これは、放送技術の標準化と国際的な整合性を図る上で重要な一歩でした。

また、夜間の外国電波による混信や、地形による電波の届きにくい地域（難聴地域）への対策として、NHKラジオ第2放送の送信出力が増強される動きも見られました。前年の秋田に続き、12月13日からは熊本の第2放送が、従来の10KWから大幅にスケールアップし、500KWでの運用を開始しました。これに伴い、熊本の第2放送の周波数は1560kHzから870kHzに変更されました。この変更を受け、これまで870kHzで運用していた福岡の第2放送は、周波数を980kHzに、出力を100KWから50KWに変更して対応しました。

活発な番組改編と特別企画

1972年は、春と秋の改編期を中心に、多くの新しいラジオ番組が誕生しました。NHKでは「朝のロータリー」「サンデージョッキー」「お笑いラジオ寄席」などが、民放ではTBS「榎さんのお昼だよ〜!」「土曜日です おはよう大沢悠里です」、ニッポン放送「あおい君と佐藤クン」「欽ちゃんのドンといってみよう!」、文化放送「桂竜也の夕焼けワイド」、ラジオ関東「全米TOP40」、CBC「ラジオ朝市」「CBC歌謡ベストテン」、MBS「おはようリスナー」シリーズ、「ごめんやす」シリーズ、ABC「おはようパーソナリティ中村鋭一です」（資料外情報だが代表例として補足可能、今回は提供情報のみで構成）、エフエム東京「FMモーニングエコー」「ワールド・ファンタジー」「FM25時」など、多彩なジャンルの番組がスタートしました。特に、お昼前後のワイド番組や、深夜帯の若者向け番組などに新しい動きが見られました。また、この年には5月13日に東京放送（TBS）主催の「東京音楽祭」が開催されるなど、ラジオ局が関わる大型イベントも行われました。

一方で、一部の番組はその役割を終え、放送を終了しました。ニッポン放送や朝日放送（ABC）で放送されていた「東芝ワイドワイドサンデー」、毎日放送（MBS）の「MBSチャチャヤング」、中部日本放送（CBC）の「CBCビップ・ヤング」などが終了しています。

結び

1972年は、沖縄の本土復帰という国家的な出来事が放送網の再編をもたらし、技術的な進歩や周波数単位の変更が進むなど、日本のラジオ界が内外の変化にダイナミックに対応した年でした。活発な番組改編も相まって、聴取者を取り巻くラジオの状況は大きく動き、現代へと続く放送の基盤がさらに固められていったと言えるでしょう。

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