1972年モナコグランプリ

1972年モナコグランプリ：雨とドラマが織りなすBRM最後の栄光

1972年のF1世界選手権第4戦、モナコグランプリは、5月14日、モンテカルロ市街地コースで開催されました。このレースは、ジャン＝ピエール・ベルトワーズの輝かしい、そして悲しい物語を刻み込むことになります。なぜなら、この勝利が彼のF1キャリアにおける唯一の優勝であり、同時にBRMチームにとっても最後の勝利だったからです。

安全性向上と予選の混乱

安全性を高めるため、ピットの位置が変更され、新しいシケインが設置されました。一方、予選では、出走台数をめぐって騒動が勃発しました。当初20台とされた出走枠は、チームからの強い反発を受け、最終的に25台に決定しました。この変更交渉は、レース直前まで続いた緊迫した状況を作り出しました。

ドライバーとマシンの顔ぶれ

インディ500への参加のため、アンドレッティとレブソンは欠場。その代わり、レッドマンがマクラーレンから参戦しました。フェラーリはイクスとレガツォーニの2台体制、ブラバムは負傷が癒えないロイテマンに代わり、フィッティパルディが引き続き参戦しました。スチュワートは新型のティレル004を投入、ハルムはマクラーレンM19Cを使用しました。BRMは複数台体制で参戦し、ベルトワーズはP160B、ガンレイは新型のP180をドライブしました。

予選：フィッティパルディがポールポジションを獲得

木曜と金曜はドライコンディションでしたが、土曜日に雨が降り、金曜夕方の時点で予選順位が確定しました。ロータスを駆るエマーソン・フィッティパルディが、自身初となるポールポジションを獲得。2番手にはイクス、3列目にはベルトワーズとゲシンが並びました。ハルム、スチュワート、ペスカロロ、レッドマンらもトップ10入りを果たしました。

決勝：ベルトワーズの圧勝劇

決勝日も雨模様。全車がレインタイヤを装着してスタートしました。ベルトワーズとレガツォーニが好スタートを切り、ベルトワーズがトップに立ちます。悪天候の中、ベルトワーズは独走状態となり、レガツォーニ、フィッティパルディ、イクスらを大きく引き離しました。多くのドライバーがミスやアクシデントに見舞われる中、ベルトワーズは安定した走りで自身初、そして唯一の優勝を飾りました。2位には雨の名手と呼ばれたイクスが入りましたが、ベルトワーズとの差は30秒以上と圧倒的でした。レガツォーニはスピンで順位を落とし、スチュワートはエンジン不調を訴えながらも3位を死守、しかしフィッティパルディに最終的に抜かれました。レッドマンが5位でフィニッシュしました。

BRM最後の輝きと選手権争い

ベルトワーズの勝利は、BRMにとって今季初、そして最後のポイント獲得となりました。また、スポンサーであるマールボロにとっても、絶好のタイミングでの勝利となりました。この勝利により、ドライバーズチャンピオンシップではフィッティパルディが首位に躍り出ました。コンストラクターズチャンピオンシップでは、ロータス、マクラーレン、フェラーリがトップを争いました。

記録

このレースでは、ベルトワーズの初優勝と唯一の優勝、フィッティパルディの初ポールポジション、そしてBRMの最後の優勝とファステストラップなど、数々の記録が生まれました。ベルトワーズの平均速度は102.756km/hでした。

この1972年モナコグランプリは、天候に左右されたスリリングなレース展開と、ベルトワーズとBRMの最後の栄光、そして選手権争いの行方を占う重要なレースとして、F1の歴史に刻まれています。

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