1973年のラジオ (日本)

1973年、日本のラジオ放送は変革期を迎えていました。この年は、各局が競うように新しい番組をスタートさせ、特に長時間にわたるワイド番組の形式が浸透していった時期にあたります。

この年のラジオ界で注目された出来事の一つに、東海ラジオが4月17日に開始した野球中継『ショーナイター』がありました。この番組は、従来の専門家による実況とは異なり、タレントが中心となって実況を務め、アナウンサーや解説者は補助的な役割に回るという、当時としては画期的なスタイルを採用しました。しかし、この実験的な試みはリスナーの間で賛否両論を巻き起こし、さらに他の地域へのネット中継において別の中継を用意する必要が生じるなど、運営上の課題も浮き彫りになりました。その結果、東海ラジオはこの形式を一年限りとし、翌1974年からは再びアナウンサーと解説者が主体となる伝統的なスタイルに戻しています。

放送網や技術面でも動きがありました。NHKは3月20日、大阪局の大電力化に伴い、京都および徳島の第2放送を廃止するという再編を行いました。また、6月13日にはNHKのラジオ第1、第2、FM放送で放送中の午後9時52分頃、機材の不具合が原因で突如「君が代」が放送されるという異例の放送事故が発生しました。沖縄では、復帰から一年が経過した10月31日をもって、琉球放送による英語放送が終了・廃止されています。一方、NHK-FMは11月17日、奄美群島に初めて名瀬、瀬戸内、徳之島、知名の4局の中継局を開局させ、放送エリアを拡大しました。

1973年は、非常に多くの新しい番組がスタートした年でもあります。各局が特色ある番組を企画・放送しました。

NHKラジオ第1: 『思い出の名人集』『なかよしジョッキー』
NHK-FM: 『きょうの邦楽』『邦楽百番』、『能楽鑑賞』『オルガンとコーラス』『青少年コンサート』『NHKホールアワー』など、芸術・文化色の強い番組やコンサート中継が開始されました。
東京放送（TBSラジオ）: 『小沢昭一の小沢昭一的こころ』が1月8日にスタートし、後に長寿番組となります。その他、『おつかれさま5時です』『しあわせ見つけた』『BCLジョッキー』などが始まりました。
文化放送: 『みのもんたのワイドNo1』が4月2日に開始し、その後のワイド番組の系譜につながる番組の一つとなりました。『五木寛之の世界』『にっぽん73 熱血討論三十分』といった硬派な番組も登場しています。
ニッポン放送: 『山谷親平のお早ようニッポン』『藤崎健のお早ようニッポン』といった早朝ワイド、そして『欽欽乃欽欽学学教室』『森菊蔵の早起きおじさん』など、個性的なパーソナリティによる番組が開始されました。深夜放送では『あのねのねのオールナイトニッポン』『カルメンのオールナイトニッポン』『岸部シローのオールナイトニッポン』などが7月に加わっています。
毎日放送: 1月6日開始の『とびだせ!白銀』を皮切りに、『おはようリスナー片山明彦です』『毎日ワイドニュース』『ニイハオ!仁鶴』『狂い咲きフォーク』『バンナム 恋の747』『歌はこころ〜懐かしのメロディー』など、多様なジャンルの番組が登場しました。
朝日放送: 『ゆうやけジョッキー』『フレッシュ9時半!キダ・タローです』など、タレントを起用した番組が開始されました。
ラジオ関東（現・ラジオ日本）: 『夕刊!ジャスト・ナウ』『男たちの夜…かな!?』『ナウ・ザ・タイム あきえとジャズ』『エミ子の長いつきあい』『とん平の土曜日だゾ・ヘイ・ユー』などが始まりました。
エフエム東京: 『音とたかしと昔話』『昼のファイン・ミュージック』『日本のうた』『あいつ』『FMラヴリー』『音楽の花束』など、音楽や物語を中心とした番組がスタートしました。
ラジオ関西: 『お早よう!サトウサンペイです』『桂三枝のズバリ!!大番組』などが開始されました。

これらの番組開始は、当時のラジオがリスナーの多様なニーズに応えようとしていた姿勢を反映しています。一方で、番組の終了もあり、例えばニッポン放送では『円鏡のモシモシ歌謡曲』『山谷親平ショー』などがこの年に幕を下ろしています。

1973年は、ラジオがメディアとしての可能性を広げ、新しい表現方法や番組形式を模索し続けた一年だったと言えるでしょう。多くの個性的な番組が生まれ、リスナーにとってラジオがより身近で魅力的な存在となっていきました。

もう一度検索