1973年ベルギーグランプリ

1973年ベルギーグランプリは、F1世界選手権の第5戦として、1973年5月20日、ベルギーのゾルダー・サーキットで開催されました。このレースは、30回目のヨーロッパグランプリという名誉ある称号を冠していました。

レース開催直前、幾人かのドライバーたちがサーキットの路面状態の悪さを指摘しました。そのため、主催者はレース開始わずか1週間前にコースの再舗装を緊急決定するという事態に。この急造の舗装が、後のレース展開に影響を与えることになります。

この年から、カーナンバーが年間を通して固定されるようになりました。翌1974年からは、前年のコンストラクターズランキングに基づいて割り当てられ、1995年まで、ドライバーズチャンピオンになるか、前年度のチャンピオンと契約しない限り、カーナンバーは変更されませんでした。

エントリーリストには、いくつかの変化がありました。フェラーリはアルトゥーロ・メルツァリオのマシンが完成せず、ジャッキー・イクスのみの参加となりました。また、エンサインはマシンが間に合わず、欠場しています。テクノは新車PA123/6で復帰を果たしましたが、スポンサーとの間で混乱があったようです。ドライバーには、マトラからクリス・エイモンが移籍していました。

予選では、再舗装された路面が、走行中に剥がれ落ちるというアクシデントが発生。ジョージ・フォルマーとジャン＝ピエール・ジャリエが事故に巻き込まれ、セベール、フィッティパルディ、スチュワートの3人はコースの安全性を理由に走行を拒否しました。セベールは、コースの再舗装が行われなければレースをキャンセルするとFIAに迫るほどでした。結局、夜間に再舗装が行われ、予選は無事に実施されました。ポールポジションを獲得したのはロニー・ピーターソン、2番手はデニス・ハルムでした。

決勝レースでは、ポールポジションのピーターソンがウォームアップ中にクラッシュ。メカニックは慌ただしくマシンを修復しました。スタート後、ピーターソンがトップを走り、セベールが追走。しかし、セベールは2周目にピーターソンを抜き、トップに立ちます。その後、イクスがオイルポンプ故障でリタイア、ハルムもイクスのオイルで大きく順位を落とすなど、レースは波乱含みの展開となりました。やがて、スチュワートが首位に立ち、後続を引き離し始めます。最終的にスチュワートが優勝、セベールが2位、フィッティパルディが3位という結果に。スチュワートは、この優勝でファン・マヌエル・ファンジオに並ぶ通算24勝目を達成しました。また、ティレルチームは今シーズン初の1-2フィニッシュを飾りました。4位にはアンドレア・デ・アダミッチ、5位にはニキ・ラウダが入賞し、ラウダはF1初ポイントを獲得しました。6位はクリス・エイモンで、テクノチームも初ポイントを獲得しました。

この結果、ドライバーズチャンピオンシップではフィッティパルディとスチュワートの差が7点に縮まり、コンストラクターズチャンピオンシップではティレルがロータスを1点差でリードしました。スチュワートの平均速度は173.384km/h、ファステストラップはセベールが記録しました。

このレースは、路面状況、マシントラブル、ドライバーたちの安全に対する意識など、様々な要素が絡み合った、ドラマチックなレースとなりました。多くのアクシデントやトラブルが発生したにも関わらず、スチュワートの圧倒的な勝利、そして新興チームの活躍など、記憶に残る一戦となりました。

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