1976年の国際連合事務総長の選出

1976年の国際連合事務総長選出の経緯

1976年、国際連合の事務総長選出は、クルト・ヴァルトハイムの1期目の任期終了のタイミングで行われました。この選挙は、国際的なパワーバランスを示す重要なイベントであり、特に中国が影響力を持っていたことが際立っていました。

背景

国連事務総長の選出に関する正式なルールはほとんど存在せず、国際連合憲章第97条に記されているのは、事務総長は安全保障理事会の勧告に基づいて総会によって任命されるという最低限の内容のみです。このため、選出の詳細は手続きや慣習によって補完されています。特に、常任理事国5か国は拒否権を有しているため、事務総長の候補者推薦は安全保障理事会のみに許可されています。

ヴァルトハイムの1期目の任期が近づく中、中国は第三世界の国々に対抗候補を提案するよう求めました。中国は、国連の大部分を占める第三世界の国々が、ヨーロッパ人の事務総長にリーダーシップを取られることに不満を持っていました。この時、6人の候補者が名乗りを上げましたが、結果としてヴァルトハイムに勝つことはできませんでした。

候補者たち

クルト・ヴァルトハイムは1976年10月11日に再選を目指して出馬を表明しました。1971年の選出では常任理事国から反対がありましたが、この時点ではアメリカとソ連の支持を得ていたため、当選が確実視されていました。あるアジアの外交官は、各国が無色透明な管理者を求めていると述べており、ヴァルトハイムの中立的な立場が評価されていました。

一方、同年10月18日、メキシコのルイス・エチェベリア大統領が立候補を表明しました。エチェベリアは、その外交姿勢から第三世界のリーダーとしての地位を築き、国際舞台での存在感を強めていました。彼は、国連事務総長としての地位を狙う意図があると批評家に指摘されることもありました。さらに、11月15日には、総会議長のハミルトン・シャーリー・アメラシンゲが事務総長に立候補する意向を表明しました。

投票の結果

1976年12月7日、安全保障理事会は事務総長の推薦に関する投票を行いました。最初の投票では、ヴァルトハイムがエチェベリアに対して圧倒的な支持を得ましたが、中国がエチェベリアに一票を投じたことで、ヴァルトハイムに対する象徴的な拒否権が行使されました。ソ連もエチェベリアに反対票を投じ、他の3か国は棄権しました。

その後、再度の投票が行われた結果、中国は拒否権を行使せずにヴァルトハイムに票を入れ、最終的には14対0でヴァルトハイムが勝利し、1977年1月1日から5年間の任期で再選を果たしました。この決定は国際的な力関係を反映するものであり、中国と第三世界の国々の影響が大きかった時代を象徴しています。

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