第三世界

第三世界の概念とその変遷

第三世界（だいさんせかい、英語: Third World）は冷戦時代に生まれ、西側諸国ならびに東側諸国に属さない国々を指す用語として広く利用されました。この用語は、国々を大まかに三つのグループに分けるために使われ、第一世界にはアメリカ合衆国や日本、EU諸国とその同盟国、第二世界にはソビエト連邦や中華人民共和国およびその同盟国、そして第三世界には上記のいずれかに属さない国々が含まれます。

冷戦が終結し、第二世界が消滅するとともに、第三世界という表現も徐々に使われなくなりました。現在では、発展途上国、後発発展途上国、グローバル・サウスといった用語が一般的に使用されています。これは、第三世界という概念が現代の政治経済状況を反映していないこと、また、歴史的に貧しいとされてきた国々が異なる所得段階を経てきていることから、時代に適応できなくなっているからです。

第三世界の多くの国々は、歴史的にアフリカ、南アメリカ、オセアニア、アジアの植民地であり、非同盟運動に参加していた国々とも関連づけられることがありました。特に、ラウル・プレビッシュやアンドレ・グンダー・フランクなどの経済学者による従属理論では、第三世界は経済的に優位な中核国に支配される周辺国と捉えられました。

しかし、第三世界という言葉の意味は時代によって変化し、論者によっても異なります。たとえば、共産圏の国であるキューバは、しばしば第三世界とみなされていました。このように、経済的に恵まれない国々が「第三世界」とされることが多かった一方で、インドネシアや中国、インドといった新興工業国もこの枠組みに含まれることがあり、現在ではBRICSとして知られています。こうした不均衡や多様性は、第三世界という呼称を曖昧にする要因となっています。

語源と背景

第三世界」という用語は、フランスの人口統計学者アルフレッド・ソーヴィによって1952年に登場しました。彼は、「第三世界」という言葉を通じて、冷戦時代における資本主義圏および共産主義圏に含まれない国々の現状を表現しようとしました。この言葉の起源は、フランス革命前の三つの身分に由来しており、第一身分が聖職者、第二身分が貴族、そしてそのほか全ての人々が第三身分とされました。ソーヴィは、第三世界もまた無視され、搾取される存在であり、変化を求めていると述べています。

関連する概念

「第三世界」という概念は、毛沢東の「三つの世界論」と対照的な側面を持っています。毛沢東は、それぞれの世界を異なる基準で捉え、第一世界が二大超大国、第二世界がその同盟国、第三世界が搾取を受けている国々と定義しました。また、第三世界主義という概念は、第一世界の影響に対抗し、第三世界の国々が団結することを求める政治運動として展開されました。

現代の状況と「第三世界」の終焉

1990年以降、「第三世界」という言葉は徐々に過去のものとして扱われるようになりました。政治的な正しさの観点から、この用語は時代遅れとされ、一般的には貧困国や低開発国を指す言葉として解釈されるようになりました。冷戦終焉後においては、発展段階が変化する国々も多く、第三世界とされていた国々が経済成長を遂げる一方で、依然として厳しい状況にある国も存在します。

これにより、今日の「第三世界」という言葉の定義は大きく変化しています。かつての意味合いが、現在では貧困や資源不足、不安定な財政状況を抱える国々を指すようになっています。結果的に、第三世界という言葉は、単に経済状態を優先するのではなく、多様な政治体制や社会状況を持つ国々を包括するものとなり、それぞれの国は特有の文脈に置かれることが求められています。

もう一度検索