1978年の広島東洋カープ

古葉竹識監督にとって就任4年目となった1978年シーズン、広島東洋カープは前年の5位から巻き返しを図るべく、チームの再建に着手しました。その目玉となったのが、長らくパ・リーグの強豪、南海ホークスで活躍した大投手、江夏豊の加入です。さらに、同じく南海からドン・ブレイザー氏をヘッドコーチとして招聘し、新たなチーム体制を構築しました。

シーズンの苦闘と浮上

シーズン開幕を迎えたカープは、期待とは裏腹に厳しいスタートを切ります。開幕カードでヤクルトスワローズにまさかの3連敗を喫するなど、4月を負け越し、3年連続で開幕ダッシュに失敗しました。4月には来日2年目のエイドリアン・ギャレット選手が驚異的なペースで本塁打を量産し、月間16本という日本プロ野球タイ記録を樹立するなど奮闘しましたが、チーム全体の浮上には繋がりません。5月下旬まで阪神タイガースとの間で最下位争いを強いられるなど、苦しい序盤戦となりました。

しかし、6月に入るとチームの歯車が徐々に噛み合い始め、成績が上向きとなります。真夏の8月には6連勝を記録し、借金生活からようやく抜け出しました。そして9月には破竹の9連勝を達成するなど猛追を見せ、一時は首位ヤクルトに1.5ゲーム差まで迫る勢いを見せました。惜しくも終盤で突き放されましたが、最終的には5ゲーム差の3位でシーズンを終え、目標としていたAクラス復帰を果たしました。

チーム力の光と影

このシーズンのAクラス復帰を牽引したのは、何よりも強力な打線でした。チーム打率は.284、本塁打数は205本といずれもリーグトップの数字を残し、圧倒的な攻撃力で後半戦の快進撃を支えました。中でも、不動の4番を務めた山本浩二選手は自身初となる本塁打王（44本）に輝き、チームを牽引。ギャレット選手（46本）、ジム・ライトル選手（42本）、そして「鉄人」衣笠祥雄選手（40本）も軒並み40本塁打前後を記録し、プロ野球史上2度目となる30本塁打カルテットを形成しました。さらに、水谷実雄選手が首位打者（打率.348）を獲得するなど、どこからでも点の取れる破壊力抜群のラインナップを誇りました。この強力打線こそが、翌1979年の球団初優勝への確かな礎となったのです。

一方で、投手陣は課題を残しました。移籍2年目の松原明夫投手、20勝経験を持つ池谷公二郎投手、そして台頭してきた3年目の北別府学投手などがローテーションの一角を担い一定の成績を収めましたが、前年最多勝に輝いた高橋里志投手が10勝に留まり、期待された江夏豊投手も抑えとして12セーブに終わるなど、計算通りとはいきませんでした。チームとして4年間続いていた最多勝投手や20勝投手の輩出が途絶え、この投手陣の不調が終盤に首位ヤクルトを捕らえきれなかった一因とも言えます。

新旧交代と記録達成

このシーズンは、新たな時代の到来を予感させる選手たちの台頭もありました。特に、高橋慶彦選手がリードオフマンとして1番に定着し、快足とパンチ力を兼ね備えた攻撃的なスタイルでチームに貢献しました。その一方で、球団初優勝時の切り込み隊長として活躍したベテラン、大下剛史選手がこの年限りで現役を引退し、チームの世代交代が進みました。

記録面では、エイドリアン・ギャレット選手が4月4日の4試合目で5号、4月13日の9試合目で11号、そして5月25日の25試合目で17号本塁打を放ち、いずれもシーズン本塁打最短到達試合の日本プロ野球記録を更新しました。また、8月3日には衣笠祥雄選手が中日ドラゴンズ戦において、日本プロ野球史上3人目となる1000試合連続出場を達成するなど、メモリアルな出来事もありました。

シーズンを通して苦しみながらも、リーグ屈指の打撃力を武器にAクラス復帰を果たした1978年の広島カープ。この一歩が、チームに自信と勢いをもたらし、翌年の悲願達成へと繋がっていくことになります。

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