1979年のル・マン24時間レース

1979年のル・マン24時間レースは、フランス、ル・マンのサルト・サーキットにおいて開催されました。このレースは、シリーズ47回目の開催となり、1979年6月9日から10日にかけて行われ、コースは従来の13.640kmから13.626kmへと変更されました。

前年の優勝チームであるルノーは、フォーミュラ1への集中を理由に本レースへの参加を見送ったため、ポルシェワークスチームのマルティニが、前年モデルを改良したポルシェ936を2台投入、圧倒的な強さを見せつけました。さらに、多数のプライベーターがポルシェ935で参戦、事実上ポルシェのワンメイクレース状態となりました。

このレースでは、日本のマツダスピードと童夢の2チームが参戦、日本チームの複数チーム参加はこれが初めてでした。マツダオート東京は、生沢徹、寺田陽次郎、クロード・ブシェ組で、13B型ロータリーエンジンを搭載したマツダRX-7 252i（シルエットフォーミュラ）を走らせました。IMSA仕様に改造されたこのマシンは、限られた予算と人員の中で、パリでインスタントラーメンを大量に買い込んで参戦したというエピソードも残っています。一方、童夢は、成功を収めた童夢零の勢いを背景に、林みのる率いる全社員26名による6ヶ月間の開発期間を経て、フォード・コスワースDFVエンジンを搭載した童夢零RLフォードを2台エントリーさせました。童夢は、イギリス人エンジニア、キース・グリーンをレース運営に迎え、事前にシルバーストン6時間レースでマシンをテスト走行させていました。

予選では、マツダは電気系統トラブルやドライバーの食中毒、ロータリーエンジンへの不慣れにより、タイムアタックを阻まれ、惜しくも予選落ちという結果に終わりました。童夢は、エンジントラブルやトランスミッションオーバーホールといった困難を克服し、2台とも予選を通過、6号車が15位、7号車が18位グリッドを獲得しました。

決勝レースは55台がスタート。童夢の7号車は序盤5位を走行する健闘を見せましたが、1時間20分でオーバーヒート、その後もトラブルが続き、3時間後にリタイヤしました。6号車も電気系統トラブルで最下位に沈んだものの、挽回を試みましたが、5時間後にガス欠でコース上でストップ、リタイヤを余儀なくされました。マシンの車重、シャシ剛性の不足、中古部品の使用など、24時間完走を目指すには不十分な状態だったことが明らかとなりました。林みのるは、マシンの状態を「あのまま走っていたらバラバラになっただろう」と振り返っています。

一方、ポルシェワークスチームはトラブルによりリタイヤ。代わりに、市販レーシングマシンであるポルシェ935が上位を独占しました。最終的に完走したのは22台のみ。優勝は、クラウス・ルドヴィク、ビル・ウィッティントン、ドン・ウィッティントン組のポルシェ935K3(41号車)でした。24時間で4173.930km、平均速度173.913km/hという記録は、1955年のル・マン24時間レースの記録とほぼ同等でした。この勝利により、ポルシェはル・マン5勝目を達成しました。

童夢の林みのるは、当初、マシンの性能をアピールする目的で参戦しましたが、マシンの欠点により早期リタイヤという結果を受けて、翌年もル・マンへの挑戦を継続することを決意しました。

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