1981年カナダグランプリ

1981年9月27日、カナダのモントリオールにあるサーキット・ジル・ヴィルヌーヴ。1981年F1世界選手権第14戦、カナダグランプリが開催されました。

このレースを前に、ドライバーズランキングではネルソン・ピケとカルロス・ロイテマンが優勝争いを繰り広げていました。前戦イタリアGPで3位に入ったロイテマンが首位に立ち、ピケは僅か3ポイント差で追いかけるという、手に汗握る展開でした。シーズン最終戦を目前に控え、タイトル争いはこの2人に絞り込まれていました。

さらに、この年限りでの引退を突然発表したアラン・ジョーンズの動向にも注目が集まりました。ウイリアムズチームへの報告をせず、先に公表したという、異例の引退表明でした。また、ニキ・ラウダが翌シーズンのF1復帰を目指し、マクラーレンのテスト走行を行っているという噂も広がり、オフシーズンの動向も話題となっていました。

予選では、ピケがポールポジションを獲得、ロイテマンが2番手と、チャンピオンシップ争いの緊張感がそのまま反映された結果となりました。一方、ターボ勢は苦戦し、アラン・プロストが4位、ジル・ヴィルヌーヴは11位に終わりました。24台が予選を通過しました。

決勝は、雨のレースとなりました。チャンピオンシップを争う2人がフロントローに並ぶ中、スタートでは3番手だったジョーンズがピケを抜き、トップに立ちます。しかし、2番手スタートのロイテマンは雨のコンディションに苦しみ、大きく順位を落とし10番手以下に沈みます。1周目にはヴィルヌーヴとルネ・アルヌーが接触、アルヌーはリタイア、ヴィルヌーヴはフロントウイングにダメージを受けました。

レースは、ジョーンズ、ピケ、プロストの3人が上位を争う展開から始まりましたが、そこに10番手スタートのジャック・ラフィットと11番手スタートのヴィルヌーヴが迫ります。6周目、ジョーンズがスピン気味に減速した隙を突いてプロストがトップに立ち、ラフィットが2番手に上がります。ピケはレインタイヤに苦戦し、順位を下げていきます。

雨の状況下では、ミシュランタイヤを履いたマシンが上位につけ、グッドイヤータイヤのウイリアムズやブラバム勢は苦戦を強いられました。7周目にはヴィルヌーヴがピケをオーバーテイクし3位に浮上します。

トップを走るプロストのペースが上がらない中、プロスト、ラフィット、ヴィルヌーヴの3台が接近戦を繰り広げました。13周目、ラフィットがプロストを抜き、トップに躍り出ると、その後は独走態勢に入ります。16周目にはヴィルヌーヴがプロストをパスし2位に上がり、地元グランプリでの2度目の優勝を目指します。

20周目時点では、ラフィット、ヴィルヌーヴ、ジョン・ワトソン、プロスト、ディディエ・ピローニ、ピケの順となっています。37周目、ワトソンがヴィルヌーヴをかわし2位に上がります。3位に落ちたヴィルヌーヴは必死に追いかけますが、39周目には周回遅れのエリオ・デ・アンジェリスと接触し、フロントウイングに大きなダメージを受けます。

レース終盤、ナイジェル・マンセルがスリックタイヤに交換するという勝負に出ましたが、これは無謀な賭けでした。すぐにスピンし、リアウイングを破損したマンセルは、低速でピットに戻る途中、2周遅れにしようとしたプロストと接触、リタイアに追い込まれました。プロストのリタイアにより、ピケは5位に順位を上げました。この1ポイントが、最終的にドライバーズチャンピオンシップを決定づける重要なポイントとなります。

55周目、ヴィルヌーヴのマシンはフロントウイングが完全に破損し、視界が半分以上遮られる状態となりました。それでも彼は最後まで走り続け、ノーズフレームごと脱落した状態でフィニッシュしました。

レースは、雨のため2時間ルールが適用され、63周で終了。ラフィットがシーズン2勝目、通算6勝目を挙げ、これが彼の最後のグランプリ優勝となりました。2位はワトソン、3位はヴィルヌーヴ。5位に入ったピケは、ポイントランキング首位のロイテマンに1ポイント差で最終戦を迎えることとなりました。チャンピオンシップ争いは、最終戦までもつれ込むことになったのです。

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