1984年モナコグランプリ

1984年モナコグランプリ：雨とドラマのモナコ

1984年6月3日、モナコグランプリは、悪天候に見舞われながらも、F1の歴史に名を刻む激戦となりました。このレースは、1984年F1世界選手権の第6戦として、モンテカルロ市街地コースで開催され、シーズン唯一のウェットレースとなりました。27台が予選に参加する中、7台が予選落ちという、激しい争いを予感させる展開となりました。

予選では、マクラーレン移籍後初となるアラン・プロストがポールポジションを獲得。1分22秒661というタイムは、その実力を改めて示すものでした。2番手にはロータスのナイジェル・マンセル、3、4番手にはフェラーリの2台が続き、5、6番手にはルノーの2台がつけていました。一方、この年プロストとタイトルを争うことになるニキ・ラウダは8位、後に伝説となるアイルトン・セナは13位と、予選ではやや苦戦しました。また、ステファン・ベロフがノンターボ勢で唯一予選を通過したことも特筆すべき点です。予選中には、マーティン・ブランドルが激しいクラッシュを喫しましたが、大きな怪我はなく事なきを得ました。

決勝レースは、激しい雨のため45分遅れてスタート。ポールポジションのプロストが、見事なスタートダッシュを決め、レースをリードしました。2番手にはマンセルがつけますが、レースはすぐにドラマチックな展開を迎えます。サン・デボーテで、ルネ・アルヌーとデレック・ワーウィックが接触。ワーウィックのマシンはコースの外側のフェンスに激突し、さらにパトリック・タンベイのマシンの進路をふさぎました。この事故でワーウィックは軽傷を負うものの、タンベイは重傷を負い、次戦のカナダグランプリを欠場することとなりました。

9周目、プロストのマシンにエンジントラブルが発生。マンセルがトップに立ちますが、6周後、マンセルはコースアウトし、リアウイングを壁に激突。プロストに抜かれ、スピンしてレースからリタイアしてしまいます。再びトップに立ったプロストでしたが、カーボンブレーキの温度不足により、ブレーキバランスに苦戦します。同じ問題を抱えていたラウダもスピンでリタイア。一方、13位からスタートしたセナは、劣るマシンながら、卓越した雨天でのドライビング技術を見せつけ、順位を上げていました。29周目、プロストはレースの中止を訴え、31周目でもその意思を示しますが、32周目の終わりにレースは赤旗中断となりました。

レースは規定周回数の75%を消化していなかったため、ハーフポイントでの集計に。プロストは、セナに僅差で抜かれたものの、この時点での順位が有効となり、優勝を手にしました。しかし、このレース中断の判断は、スポーツカーレースでポルシェのリードドライバーを務めていた競技委員ジャッキー・イクスの判断であり、ポルシェエンジンを搭載するプロストに有利な判断であったとして、物議を醸しました。この結果、プロストは最終的に、ラウダに0.5ポイント差でチャンピオンシップを逃すこととなりました。

このレースでは、プロストとセナ以外にも、注目すべきドライバーがいました。ステファン・ベロフは、予選20位から3位まで順位を上げたものの、ティレルのレギュレーション違反により失格。3位にはアルヌーが繰り上がりました。また、セナはこのレースで、F1での初ファステストラップを記録しました。1984年モナコグランプリは、悪天候、アクシデント、そして物議を醸す決着と、数々のドラマが凝縮された、忘れられないレースとしてF1の歴史に刻まれました。

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