1984年南アフリカグランプリ

1984年4月7日、南アフリカのキャラミ・サーキットにおいて、F1世界選手権第2戦、1984年南アフリカグランプリが開催されました。このレースは、その後のシーズン展開を占う上で重要な要素を含む、数々のドラマチックな出来事が発生したレースとして記憶されています。

まず特筆すべきは、レーススケジュールです。この1984年シーズン、土曜日に決勝レースが行われたのは、この南アフリカグランプリのみでした。通常とは異なるスケジュールは、その後のレース展開にも影響を与えたと言えるでしょう。

決勝レース当日、午前中のウォームアップ走行中に、衝撃的な事故が発生しました。オゼッラのピエルカルロ・ギンザーニ選手が、エンジンとギアボックスがモノコックから分離するほどの激しいクラッシュに見舞われたのです。マシンは炎上し、ギンザーニ選手は動揺の中でヘルメットと左側のグローブを外してしまいましたが、幸いコースマーシャルの迅速な救出により、軽度の火傷で済みました。

この大クラッシュにより、ギンザーニ選手はレースへの出走を取り消します。その結果、グリッドが繰り上がり、予選では27位で決勝進出を逃していたティエリー・ブーツェン選手が、奇跡的に最後のグリッドを獲得することとなりました。

レースはネルソン・ピケ選手のリードでスタートしましたが、ピケ選手は序盤にタイヤを痛めてしまいます。その隙を突いたニキ・ラウダ選手がトップに立ち、そのまま独走状態に。ラウダ選手は最後までそのリードを守り抜き、見事優勝を飾りました。2位にはアラン・プロスト選手が入り、マクラーレンチームは1-2フィニッシュという快挙を達成しました。

注目すべきは、トールマンのアイルトン・セナ選手です。このレースがF1参戦2戦目だったセナ選手は、6位でフィニッシュ。F1初ポイントを獲得し、その後の輝かしいキャリアの幕開けを予感させる結果となりました。

一方、ギンザーニ選手のクラッシュで繰り上がり出走を果たしたブーツェン選手は、レースでは9位でゴールしました。しかし、計測ミスにより、実際よりも1周少ない周回数で記録されてしまい、12位という結果に修正されてしまいました。チームは順位の訂正を訴えましたが、規定時間内に抗議が提出されなかったため、ブーツェン選手の順位は12位で確定したのです。

このように、1984年南アフリカグランプリは、ラウダ選手の圧勝、セナ選手の初ポイント獲得、そしてギンザーニ選手のクラッシュとブーツェン選手の繰り上がり出走など、様々なドラマが凝縮された、記憶に残るレースとなりました。土曜日の決勝という異例のスケジュールも相まって、このレースはF1の歴史の中でも特異な位置を占めるものと言えるでしょう。

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