1985年の広島東洋カープ

1985年の広島東洋カープ

1985年の広島東洋カープは、古葉竹識監督が指揮を執って11年目にあたるシーズンでした。前年に4年ぶりのリーグ優勝と念願の日本一を果たし、この年はセ・リーグ連覇を目指す戦いが始まりました。

しかし、シーズン序盤からチームは予期せぬ事態に見舞われます。エースとして期待されていた山根和夫投手が右肩の故障で長期離脱を余儀なくされ、さらに小林誠二投手が右肘痛、津田恒美投手が血行障害による右肩の違和感を抱えるなど、投手陣に故障者が相次ぎました。打線でも、精神的支柱であり主砲である山本浩二選手が開幕から出遅れ、実戦復帰は5月までずれ込むことになりました。これらの主力の離脱はチームにとって大きな痛手となり、4月は7勝6敗と貯金はわずか1。さらに5月も11勝12敗と負け越し、終盤に逆転を許す試合も目立ち、開幕ダッシュに失敗して波に乗り切れない苦しいスタートとなりました。

転機が訪れたのは、夏の暑い時期に入ってからです。チームは夏場からの2ヶ月間で24勝8敗という驚異的な勝率を記録し、セ・リーグの首位戦線を走っていた阪神タイガースや読売ジャイアンツをかわし、一時はトップに躍り出ました。8月前半にかけても好調を維持し、連覇に向けて視界が開けたかに見えました。

ところが、後半戦も終わりに近づくにつれて、再びチームに陰りが見え始めます。8月後半に突如として7連敗を喫して失速すると、迎えた9月は6勝11敗と大きく負け越し、優勝争いから脱落。阪神に優勝へのマジックナンバーが点灯することを許してしまいます。10月に入りチームは持ち直すものの、もはや手遅れであり、10月16日に阪神タイガースの38年ぶりのセ・リーグ優勝を目の前で決められることになりました。結果的にセ・リーグ2位でシーズンを終え、惜しくも連覇はなりませんでした。

この年の広島カープは、度重なる投打の主力の故障に苦しみながらも、最後まで粘り強く戦い抜きました。特に、自慢の強力打線は前年に引き続きリーグ屈指の得点力を誇り、高橋慶彦選手と山崎隆造選手の俊足巧打の1・2番コンビも健在でした。投手陣では、北別府学投手、川口和久投手、大野豊投手といった選手が先発の柱として機能し、長期離脱した主戦投手の穴を、川端順投手や金石昭人投手、高木宣宏投手といった若手投手が懸命にカバーしました。また、捕手では達川光男選手と山中潔選手が激しいレギュラー争いを繰り広げ、チームを支えました。優勝した阪神に対しては、リーグの中で唯一勝ち越した相手（15勝11敗）であり、その力は決して劣るものではありませんでした。

このシーズンの終結後、1975年の初優勝から11年間にわたりチームを率い、黄金期を築いた古葉竹識監督がユニフォームを脱ぎ勇退しました。後任監督としては、阿南準郎コーチが昇格して就任しました。また、古葉監督の勇退とともに、長年チームを支えた池谷公二郎投手が現役を引退しました。

主力選手の故障による苦難、そこからの驚異的な巻き返し、そして終盤の失速と惜しくも優勝を逃した1985年シーズンは、カープの歴史において、連覇の難しさとともに、チーム力の底力と若手の台頭が光る一年として記憶される一年となりました。

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