1985年の日本競馬

1985年（昭和60年）の日本競馬界は、皇帝と呼ばれた稀代の名馬シンボリルドルフの圧倒的な活躍が最も印象に残る年となりました。

前年に史上4頭目のクラシック三冠に加え、有馬記念も制してGI4勝をマークしていたシンボリルドルフは、この年もその強さを見せつけました。春の天皇賞では、かつての三冠馬ミスターシービーとの3度目の対決が注目を集めましたが、シンボリルドルフは力強い競馬で完勝しGI5勝目。敗れたミスターシービーはこのレースを最後にターフを去りました。

シンボリルドルフは海外遠征も視野に入れていましたが、宝塚記念直前に軽い脚部不安を発症し出走を取り消したことで計画は延期に。秋のぶっつけ本番となった天皇賞（秋）では伏兵ギャロップダイナの強襲に屈し2着となりましたが、続くジャパンカップ、そして年末の有馬記念を連勝し、ついにGI勝利数を「7」まで伸ばしました。これは当時のJRAにおける最多タイ記録でした。有馬記念が現役最後の国内レースとなり、翌年からは海外遠征へと旅立つことになります。

三歳馬（旧表記4歳）によるクラシック戦線も盛り上がりを見せました。五冠馬シンザンの血を引くミホシンザンは、皐月賞を無敗のまま5馬身差で圧勝し、父子二代での三冠達成への期待が高まりました。しかし、レース直後に骨折が判明し、東京優駿（日本ダービー）への出走を断念せざるを得なくなりました。

ミホシンザンが不在となったダービーでは、皐月賞を脚部不安で回避していたシリウスシンボリが本命視されました。若葉ステークスからダービーへ直行するという異例のローテーションながら1番人気に応えて勝利し、シンボリ牧場に生産馬によるダービー連覇をもたらしました。しかし、シリウスシンボリもダービー後は約2年間の長期海外遠征に向かったため、秋以降のクラシック戦線には登場しませんでした。

秋になり、ミホシンザンが戦列に復帰。セントライト記念は苦手の重馬場に泣き5着に敗れましたが、京都新聞杯を経て迎えた菊花賞を制し、皐月賞との二冠を達成しました。結局、長期海外遠征を終えて帰国したシリウスシンボリと、その頃には故障で引退が決まっていたミホシンザンが国内で対決することは一度もありませんでした。

短距離路線では、前年の初代マイルチャンピオンシップを制したニホンピロウイナーが君臨しました。安田記念を制してマイルGI連覇を達成。秋には距離延長して天皇賞（秋）にも挑戦し、最強馬シンボリルドルフに迫る3着に入る健闘を見せました。そしてマイルチャンピオンシップを連覇し、有終の美を飾って引退しました。

一方で、1985年は競馬界にとって悲しい出来事やトラブルも少なくない年でした。宝塚記念では、上位入線馬から禁止薬物が検出され失格となる事件が発生。また、現役騎手の中島啓之氏が病気のため42歳の若さで急逝しました。地方競馬では、坂本敏美騎手が落馬により選手生命を絶たれる重傷を負っています。さらに、競走中の事故により、桜花賞馬シャダイソフィアやオークス馬ノアノハコブネといった活躍馬が命を落とすという痛ましい出来事もありました。

主要な中央競馬GIレースの勝ち馬は以下の通りです。

桜花賞：エルプス
皐月賞：ミホシンザン
天皇賞（春）：シンボリルドルフ
安田記念：ニホンピロウイナー
優駿牝馬（オークス）：ノアノハコブネ
東京優駿（日本ダービー）：シリウスシンボリ
宝塚記念：スズカコバン
天皇賞（秋）：ギャロップダイナ
エリザベス女王杯：リワードウイング
菊花賞：ミホシンザン
マイルチャンピオンシップ：ニホンピロウイナー
ジャパンカップ：シンボリルドルフ
朝日杯3歳ステークス：ダイシンフブキ
阪神3歳ステークス：カツラギハイデン
* 有馬記念：シンボリルドルフ

年間表彰では、シンボリルドルフが年度代表馬に選出されました。この年、日本の競馬界は偉大な歴史が刻まれる一方で、様々な出来事が発生し、多くの人々の記憶に残る一年となりました。

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