1985年ブラジルグランプリ

1985年ブラジルグランプリ：プロストの勝利、そして波乱の幕開け

1985年のF1世界選手権は、4月7日、ブラジルのジャカレパグア・サーキットで開幕しました。このブラジルグランプリは、いくつかの予期せぬ出来事が発生し、ドラマチックな展開を見せたレースとして記憶されています。

まず、前年シーズン途中にタイヤサプライヤーをピレリからミシュランに変更したトールマンは、このシーズン、ピレリとグッドイヤーのどちらとも契約を結ぶことができませんでした。そのため、開幕戦を欠場せざるを得ない事態に陥りました。これは、チームにとって大きな痛手となりました。

さらに、ティレルチームでは正ドライバーであるステファン・ベルノフとの間で契約問題が発生。その結果、当初トールマンから参戦予定だったステファン・ヨハンソンが、急遽ティレルのドライバーとして起用されるという異例の事態となりました。ドライバー変更は、チーム戦略に大きな影響を与える可能性があり、このレースの結果にも少なからず影響を与えたと考えられます。

予選では、フェラーリのミケーレ・アルボレートが、完全に新設計されたマシン156/85を持ち込み、ポールポジションを獲得しました。前年、1勝1ポールポジションという成績に終わったフェラーリにとって、これは幸先の良いスタートとなりました。アルボレートの好調ぶりに、チーム関係者も期待を寄せたことでしょう。

決勝レースは、2番手グリッドからスタートしたケケ・ロズベルグが、スタート直後にトップに立ちました。しかし、アルボレートは1コーナーでナイジェル・マンセルと接触。幸い走行を続けることができましたが、この接触がレース展開に影響を与えることになります。その後、ロズベルグがターボトラブルによりストップ。これにより、アルボレートがトップに躍り出ました。しかし、マンセルとの接触以降、アルボレートのマシンはアンダーステアに悩まされ続けます。19周目には、アラン・プロストに首位を奪われてしまいました。

プロストはその後、ゴールまでトップを譲ることなく走りきり、ブラジルグランプリで6度目の参戦にして3勝目を挙げました。プロストの経験と技術、そしてマシンの安定性が、優勝の鍵となったと言えるでしょう。一方、地元ブラジルの英雄、ネルソン・ピケは2周でリタイヤという悔しい結果に終わりました。

アイルトン・セナは、チームメイトのエリオ・デ・アンジェリスに次ぐ4番グリッドからスタート。デ・アンジェリスを上回り、レースをリードしました。しかし、48周でリタイヤ。最後まで優勝争いに加わることはできませんでしたが、セナの才能とポテンシャルを垣間見せる走りとなりました。

この1985年ブラジルグランプリは、トールマンの欠場、ティレルのドライバー変更、そしてレース中の様々なアクシデントなど、多くのドラマが凝縮されたレースとなりました。優勝したプロストの卓越したドライビングはもちろんのこと、各ドライバーの個性やチームの戦略、さらにはマシンの性能などが複雑に絡み合い、非常に白熱した展開となったことは間違いありません。このレースは、1985年シーズンの激しさ、そしてF1という競技の奥深さを象徴する一戦となりました。

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