1991年の日本の女性史

1991年（平成3年）は、日本の女性を取り巻く環境に多様な動きが見られた年です。国際的な活躍から国内での新たな分野への進出、働き方の法整備、そしてジェンダーに関わる課題の顕在化まで、様々な出来事が重なり、その後の日本の女性史に影響を与える節目となりました。

この年、女性の国際的な貢献や偉業が注目されました。緒方貞子が日本人初の国連難民高等弁務官に就任し、世界を舞台に活動。登山家の田部井淳子は南極大陸最高峰を制覇、女性として世界初の6大陸最高峰登頂者（翌年7大陸達成）となるなど、歴史に残る記録が生まれました。

国内社会でも女性の活躍の場が広がりました。兵庫県芦屋市では初の女性市長（北村春江）が誕生し、地方政治における女性リーダーの先駆けに。千葉県警では初の女性暴走族Gメンが誕生するなど、これまで男性が中心だった分野への女性の進出も見られました。

働く女性を取り巻く法制度も進展。育児休業法が成立し、育児休業の請求権が保障されるとともに、取得を理由とする不利益な扱いが禁止されました。これは仕事と育児の両立支援の基盤です。政府も「男女共同参画社会」の実現を提唱、性別に関わらない活躍を目指す理念を示しました。

メディアでは、女優のヘアヌード写真集発売が表現の自由を巡る議論を喚起。文化面では、ディスコ「ジュリアナ東京」がオープンし、独自のファッション文化を生み話題に。医療分野では、妊娠検査薬が一般用医薬品となり、女性のヘルスケア利用が容易に。凍結卵子による国内初の体外受精成功も報告、生殖医療が進展しました。

長年潜んでいた歴史的な人権問題が表面化。元従軍慰安婦金学順氏が被害体験を公に語ったことは、従軍慰安婦問題への関心を高め、関連団体の発足や日本政府への訴訟提起に繋がりました。職場でのハラスメント問題も顕在化、熊本では女性市議が県議をセクハラで刑事告訴。世論調査では、性別役割分担意識や夫婦別姓への賛成増加が示されました。

労働分野の調査では、均等法後も雇用慣行に課題が残る一方、育児休業制度の利用は一定数進んでいる実態が示されました。この年、4年制大学卒業女性の就職率が初めて男性を上回ったことは、女性の高学歴化と社会進出の進展を象徴。社会意識としても、性別役割分担にとらわれない考え方が広がりつつあることがうかがえました。

1991年は、女性の社会的な活躍、権利保障、多様性の追求、そしてジェンダー平等に向けた課題提起など、様々な側面で動きがあった年です。この年に起こった出来事は、その後の日本の社会や女性を取り巻く環境に大きな影響を与え、現代に繋がるジェンダーに関する議論や取り組みの基盤となりました。

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