1994年マラウイ総選挙

1994年マラウイ総選挙：複数政党制導入と「カメレオン民主主義」の幕開け

1994年5月17日、マラウイは独立以来初めてとなる複数政党制下での総選挙を実施しました。この選挙は、長きにわたるヘイスティングズ・カムズ・バンダによる一党独裁体制の終焉を告げ、マラウイの政治に大きな変化をもたらしました。

選挙に至るまでの経緯

1960年代半ばから、マラウイはバンダ率いるマラウイ会議党（MCP）による一党制が続いていました。しかし、1990年代に入ると国内外からの圧力が高まり、1993年に多党制導入の是非を問う国民投票が実施されました。その結果、翌年の選挙から多党制を導入することが決定し、1994年の総選挙はマラウイ初の複数政党制選挙として実施されることになったのです。

この選挙には、現職大統領のバンダ率いるMCP、元MCP幹事長であったバキリ・ムルジ率いる統一民主戦線（UDF）、労働組合主義者のチャクフワ・チハナ率いる民主同盟（AFORD）の3党が議席を争いました。また、大統領選には、上記3党の代表に加え、マラウイ民主党のカムペロ・カルアの計4名が出馬しました。

選挙結果

大統領選挙では、UDFのバキリ・ムルジが47.15%の得票を得て当選し、30年にわたるバンダの独裁体制に終止符が打たれました。国民議会選挙では、UDFが過半数には届かなかったものの84議席を獲得し、第一党となりました。

選挙後：カメレオン民主主義と政治腐敗

この選挙後、マラウイの政治には「カメレオン民主主義」と呼ばれる特有の現象が見られるようになりました。これは、所属政党や信条よりも、権力への接近と獲得を最優先に、議員が政党や主張を自在に変え、迎合と離反を繰り返すというものです。

例えば、UDFは第一党になったものの過半数を獲得できなかったため、AFORDとの連立を模索しましたが、合意には至りませんでした。その後、AFORDはMCPとの連立を画策しましたがこれも決裂。最終的に、UDFとAFORDが連立を組み、いくつかの閣僚ポストがAFORDに割り振られました。しかし、1996年には両党の連立が崩壊し、大臣・副大臣のポストを得たAFORDの議員は、AFORDを離党して閣内に留まりました。

また、UDF所属のジャスティン・マレウェジは、かつてMCPの要職を務めていましたが、バンダに追われた後にAFORDの設立に関わり、その後UDFに加わって副大統領の座を獲得しました。

このような「カメレオン民主主義」は、その後の1999年や2004年の選挙でも見られました。

ムルジ政権以降、暗殺や亡命は減少した一方で、汚職や賄賂が蔓延し、政治腐敗が進んだとの指摘があります。また、政治運営の一貫性のなさも問題視されています。

次の選挙は、1999年に行われました。

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