1999年の夏休み

1999年の夏休み

『1999年の夏休み』は、萩尾望都の名作漫画『トーマの心臓』を原作にした金子修介監督の青春映画で、1988年3月26日に公開されました。深津絵里の映画デビュー作としても注目され、当時の近未来を舞台に、女性が少年の役を演じるという斬新な演出が施されています。

概要

この映画は4人の出演者だけで構成されており、物語は全寮制の男子校が舞台です。この校舎では、教師や職員がいなくなった夏休みに、帰省しない3人の少年が残されるという状況が描かれます。映画の製作時には、監督の金子が萩尾に製作の許可を求め、翻案という形で製作が進められました。公開当時、スタッフロールには萩尾の名前はありませんが、金子は作品が視覚的に表現されることで、原作の精神を尊重しています。

金子監督は、押井守から「これで終わりではなく、次の作品にはどう取り組むつもりだ」と質問されたことが、映画のパンフレットに記されています。また、この作品は1992年に脚本を手掛けた岸田理生によってノベライズされ、角川ルビー文庫から刊行されたことも特徴的です。

2014年には、金子監督の新作『少女は異世界で戦った』の公開を記念して、この作品の35ミリフィルムでの上映会が行われた他、2018年には公開30年を記念してデジタルリマスター版が夏に上映され、新宿では多くの観客を集めました。

2020年には、演出や構成を手掛けた新たな舞台版が上演され、さらに別演出による新たなエピソード版も計画されています。

あらすじ

物語は1999年の日本に設定され、山奥に位置する全寮制の男子校がテーマです。夏休みに入り、教師たちが去った後、寮には3人の少年のみが留まります。この学院では最近、無くなった悠という生徒の行方がわからなくなっていました。湖に落ちたとの推測がされる中、遺体は見つかっていません。

中学3年生の和彦は心を閉ざしており、人との関わりを拒む少年ですが、優れた美貌で周囲から好かれています。同級生の直人は彼に密かに想いを寄せていますが、和彦にはその気持ちに気づかれていません。一方、2年生の則夫は直人を優しく扱うことから、和彦を疎ましく感じていました。

そんな寮に突然、悠に似た転入生の薫が現れます。自身のことを悠だと言った薫は、物怖じしない性格で、和彦と争う場面も見られます。実は悠は和彦に遺書を残し、湖に身を投げたのです。和彦が悠を苛めていたことが、彼の死の遠因となっていました。

和彦は薫に惹かれていきますが、直人はその関係を心配します。薫が一度帰郷する際、和彦は彼を追いかけることになりますが、伊藤が悠を意識していることに気づく直人。和彦が薫に告白する中、授業以上の複雑な愛が交錯していきます。

最終的に、和彦と薫は共に湖に飛び込むことになりますが、救助された和彦は、薫の姿を見つけることはできません。新たな学期に、また異なる生徒が学院にやって来る様子を描いて、物語は終わります。

キャスト

★ 監督: 金子修介
★ 脚本: 岸田理生
★ 撮影: 高間賢治
★ 照明: 安河内央之
★ 音楽: 中村由利子
★ 製作: 岡田裕、岸栄司
★ プロデューサー: 成田尚哉、肥田光久
★ ナレーション: 前田昌明

この映画は、その美しい設定や複雑な人間関係を通して、視聴者に深い感情を抱かせる力がある作品として、長年にわたって愛され続けています。

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