1999年の紀伊國屋書店における漫画撤去問題

1999年紀伊國屋書店における漫画撤去問題

1999年、紀伊國屋書店で発生した漫画撤去問題は、児童ポルノ禁止法の施行が引き金となり、成年向けだけでなく、一般向けの漫画までが撤去されるという異常な事態を引き起こしました。この事件は過剰な自主規制の一例として大きな注目を集めたのです。

事件の経緯

1999年に児童ポルノ禁止法が施行され、児童ポルノの販売が禁止されると、各書店は関連の書籍や雑誌を撤去する方針を打ち出しました。その際、紀伊國屋書店は、注意事項を店舗に通達し、児童ポルノ規制の対象外だった漫画やアニメーション作品に対しても慎重な対応を求めました。この結果、漫画やアニメに対する過剰な自主規制が実施され、成年向けマンガや有名な一般向け作品、さらにはヌード描写を含む漫画が撤去されることとなりました。

影響を受けた作品

具体的には、『バガボンド』や『ベルセルク』、『あずみ』など、いずれも高い芸術的評価を受けている作品が、一般向けでありながらも撤去対象となりました。『あずみ』は1997年に文化庁メディア芸術祭のマンガ部門で優秀賞を受賞しており、他の作品も多くの受賞歴を持つため、その自主規制の影響は非常に大きなものでした。さらに、有名タレントが出演する写真集や、他の書籍についても同様に撤去対象にされ、その影響は大手出版社にまで及びました。

この撤去騒動の中、売り場には「児童ポルノ禁止法が施行されました。当店は法律を遵守します」という張り紙が掲示されました。

参議院での質疑応答

2013年、参議院予算委員会において、みんなの党の山田太郎参議院議員が本問題を取り上げ、法規制により名作や芸術作品が自主規制によって撤去されることに対する懸念を表明しました。彼は、こうした規制がクールジャパンの文化を傷つける可能性があると警告し、また、憲法で保障された表現の自由が損なわれる危険性に言及しました。

安倍晋三内閣総理大臣もこの意見を受け、児童の性を描いた作品が風潮を助長する一方で、表現の自由に大きく関わる問題であるため、慎重な考慮が必要であると述べました。麻生太郎副総理も、漫画が子ども向けとして認識されることが規制の理由となっていると指摘しました。

海外の影響

また、アメリカ合衆国にある紀伊國屋書店でも、萌え系雑誌が撤去されたことが報告されています。これは国境を越えた影響があり、表現の自由に対する規制が国によって異なることを示しています。

結論

1999年の紀伊國屋書店の漫画撤去問題は、文化や表現の自由に対する深い議論を引き起こす重要な出来事でした。警戒すべきは、質の高い作品であっても、法規制や自主規制により撤去されてしまう環境が生じることであり、これが文化産業に与える影響は計り知れません。

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