2億4千万の瞳-エキゾチック・ジャパン-

郷ひろみ「2億4千万の瞳 -エキゾチック・ジャパン-」：国鉄キャンペーンソングの軌跡と80年代歌謡史における存在感

1984年2月25日、郷ひろみ50枚目のシングル「2億4千万の瞳 -エキゾチック・ジャパン-」がリリースされました。前作から約2ヶ月という短いインターバルでのリリースは、当時の郷ひろみの勢いを物語っています。この曲は、単なるヒット曲という枠を超え、日本の音楽史、そして社会現象にも深く関わっていると言えるでしょう。

国鉄最後のキャンペーンソング：時代を反映した楽曲

本楽曲は、日本国有鉄道（国鉄）最後のキャンペーン「エキゾチック・ジャパン」のキャンペーンソングとして制作されました。山口百恵の「いい日旅立ち」に続く国鉄キャンペーンソングとして、大きな注目を集めました。その初披露は、実に異例な方法で行われました。座席を取り外した東海道新幹線の0系車両を臨時列車として運行し、その車内で報道陣や招待客を前に披露されたのです。東京駅から新大阪駅まで走行するこの臨時「ひかり」号は、キャンペーンのインパクトを最大限に高める演出となりました。

曲名と歌詞：独自のコンセプトと巧みな表現

「2億4千万の瞳」というインパクトのあるタイトルは、壺井栄の小説『二十四の瞳』と、当時の日本の人口（約1億2千万人）から着想を得ています。瞳の数を2倍にすることで、より壮大なイメージを表現しています。作詞を手掛けた売野雅勇氏は、「人称代名詞を使わない」という独自のコンセプトで作詞を行い、普遍的なメッセージをリスナーに届けることに成功しました。このコンセプトは、楽曲の奥深さ、そして時代を超えて聴き継がれる理由の一つと言えるでしょう。

記録とジャケット：チャート成功と著名な写真家とのコラボ

オリコンチャートでは21.3万枚というセールスを記録し、商業的にも大きな成功を収めました。ジャケット写真は、写真家・篠山紀信氏によって撮影されており、その芸術性の高さも話題となりました。篠山氏の独特な視点と郷ひろみの魅力が融合したジャケット写真は、楽曲の世界観をさらに高めています。

現代への影響：音楽番組でのカバーと新たなキャンペーンソング

近年でも、本楽曲は様々な形で再評価されています。2021年には、YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』にてカバーされ、新たな世代にもその魅力が伝わる機会となりました。また、2007年にはBSデジタル放送のキャンペーンソングとしてアレンジ版が使用されるなど、時代を超えて愛され続けていることが分かります。

「2億4千万の瞳 -エキゾチック・ジャパン-」の文化的意義

この楽曲は、単なるヒット曲にとどまらず、複数の側面から日本の音楽文化に貢献しています。国鉄キャンペーンソングとしての役割、売野雅勇氏による作詞、篠山紀信氏によるジャケット写真、そして『THE FIRST TAKE』でのカバーなど、様々な要素が絡み合い、この曲が持つ意味をより豊かにしています。さらに、お笑い番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』や『博士と助手〜細かすぎて伝わらないモノマネ選手権〜』などでも取り上げられ、世代を超えた認知度を獲得している点も見逃せません。これらの事実は、「2億4千万の瞳 -エキゾチック・ジャパン-」が単なる一曲ではなく、日本のポップカルチャーを彩る重要な作品であることを示しています。

参考文献

スージー鈴木『1984年の歌謡曲』イースト・プレス〈イースト新書〉、2017年2月。ISBN 978-4-7816-5080-7。

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