2台のピアノのための組曲 (ショスタコーヴィチ)

2台のピアノのための組曲 作品6

ドミートリイ・ショスタコーヴィチが作曲した「2台のピアノのための組曲 作品6」は、彼がまだ10代の頃に書かれた重要な初期作品です。同じ編成による作品としては、後に「2台のピアノのための小協奏曲 作品94」も発表していますが、本作は作曲家の個人的な悲劇と深く結びついています。

作曲の背景

この組曲が生まれる数週間前、1922年2月4日にショスタコーヴィチの父、ドミートリイ・ボレスラーヴォヴィチが46歳で急逝しました。この突然の訃報は家族に深い悲しみをもたらすと同時に、一家に深刻な経済的苦難をもたらしました。当時15歳だったショスタコーヴィチは、家計を助けるために映画館でピアニストとして働くことを余儀なくされます。彼は学業と両立しながら、姉のマリーヤが音楽院を卒業して安定した職に就くまで、この厳しい生活を続けました。加えて、ショスタコーヴィチ自身の健康状態にも問題を抱えており、この時期は彼にとって精神的にも肉体的にも非常に困難なものでした。なお、この映画館でのアルバイトをしていた頃には、後の重要なジャンルとなるピアノ三重奏曲の第1番も作曲されています。

作品の成立と初演

父の死という衝撃と、それに続く一家の苦境の中で、ショスタコーヴィチは1922年の3月頃にこの「2台のピアノのための組曲」を書き上げました。作品は、亡き父の思い出に捧げられています。個人的な追悼の念が込められたこの組曲は、作曲から数年後の1925年3月20日に初めて公開の場で演奏されました。初演の舞台となったのはモスクワ音楽院の小ホールで、演奏は作曲者自身が著名なピアニストであるレフ・オボーリンと共に務めました。

楽曲の構成と特徴

この組曲は以下の4つの楽章から構成されています。

1. 前奏曲
2. 幻想的舞曲
3. 夜想曲
4. 終曲

音楽全体は、ロシア音楽特有の甘く感傷的な抒情性に満ちています。旋律は美しく、聴く者に深い印象を与えます。若きショスタコーヴィチの音楽的な才能は既に顕著であり、特に楽曲形式を巧みに扱い、彼独自の個性的なリズム感覚を発揮している点に、その後の大作曲家の片鱗を強く感じ取ることができます。感傷的でありながらも、形式的な洗練とリズムの斬新さが見事に融合した作品と言えるでしょう。

結び

「2台のピアノのための組曲 作品6」は、ショスタコーヴィチが人生の大きな悲しみと困難に直面していた時期に生み出されました。父への追悼として捧げられたこの作品は、彼の初期の音楽スタイルを特徴づける甘美さと感傷性、そして形式とリズムにおける独自の探求心を示す重要な証となっています。個人的な感情が作品に深く反映された、聴きごたえのある初期の傑作です。

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