レフ・オボーリン

レフ・オボーリン：ソビエト音楽界の巨匠とその足跡

レフ・ニコラーエヴィチ・オボーリン（1907年-1974年）は、20世紀を代表するソビエト連邦のピアニストです。類まれな演奏技術と深い音楽性で知られる一方、教育者としても大きな功績を残し、数々の名ピアニストを育成したことで知られています。

オボーリンは1907年、モスクワに生まれました。幼少期から才能を示し、モスクワのグネーシン音楽学校で研鑽を積みます。名教師であるエレーナ・グネーシナ（ミハイル・グネーシンの姉にして、ブゾーニの高弟）に師事し、ピアノの基礎を固めました。作曲をアレクサンドル・グレチャニノフに師事したことも、彼の音楽家としての幅を広げる上で大きな役割を果たしました。グネーシン音楽学校では、優れた成績で卒業しました。

1921年、モスクワ音楽院に入学。ピアノ科と作曲科の両方に籍を置き、名ピアニストとして知られるコンスタンチン・イグームノフの指導を受けました。1926年にピアノ科を卒業すると、イグームノフの推薦により、1927年に開催された第1回ショパン国際ピアノコンクールに参加。並み居る強豪を抑え、見事優勝を果たしました。この快挙は、オボーリンの名を世界に知らしめるきっかけとなりました。その後、ポーランドとドイツで演奏旅行を行い、国際的なピアニストとしての地位を確立していきました。1945年まで、ソ連国内で精力的に演奏活動を行いました。

演奏活動と並行して、オボーリンは教育者としても活躍しました。1948年からは母校であるモスクワ音楽院で教鞭をとり、多くの若手ピアニストを育成しました。彼の教えを受けたピアニストたちの中には、ウラディーミル・アシュケナージ、エカチェリーナ・ノヴィツカヤ、ディミトリー・サハロフなど、世界的に著名な演奏家が多く含まれています。これらの弟子たちは、オボーリンの薫陶を受け、それぞれ独自の音楽性を確立し、世界中で活躍しています。オボーリンの指導は厳格でありながらも温かく、弟子たちを深く理解し、それぞれの才能を伸ばすことに尽力したことが知られています。

オボーリンは、ヴァイオリニストのダヴィッド・オイストラフとも深い友情で結ばれていました。1935年の共演をきっかけに、終生にわたる協力関係を築き、数々の名演を残しました。特に、オイストラフとのベートーヴェンヴァイオリンソナタのフィリップス録音は、歴史的名盤として高く評価されています。また、オイストラフ、スヴャトスラフ・クヌシェヴィツキーとオイストラフ三重奏団を結成し、国際的な名声を得ました。しかし、クヌシェヴィツキーの逝去により、1963年に解散しました。

さらに、オボーリンは現代音楽の普及にも貢献しました。ミャスコフスキー、プロコフィエフ、ハチャトゥリアン、シェバリーン、ショスタコーヴィチといった同時代の作曲家の作品を数多く初演し、現代音楽の理解と発展に大きく寄与しました。

審査員としても活躍し、ショパン国際ピアノコンクールやリーズ国際ピアノコンクールなど、数々の国際コンクールの審査員を務めました。モスクワ、リスボン、パリ、ツヴィッカウなど、世界各地のコンクールでも審査員としてその手腕を発揮しました。

レフ・オボーリンは、ピアニスト、教育者、そして審査員として、ソ連音楽界に多大な貢献をしました。彼の音楽への情熱と、後進への深い愛情は、多くの音楽家たちに受け継がれ、今もなお世界中で輝き続けています。彼の残した膨大なレパートリーと録音は、未来の音楽家たちにとって貴重な財産であり続けるでしょう。

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