20フェンチャーチ・ストリート

20フェンチャーチ・ストリート：ウォーキートーキーの光と影

ロンドンの金融街、シティ・オブ・ロンドンにそびえ立つ20フェンチャーチ・ストリート。その特徴的なデザインから「ウォーキートーキー」の愛称で親しまれるこの超高層ビルは、2014年の竣工以来、話題を呼び続けています。しかし、その歴史は成功物語だけではありません。設計、建設、そして運用を通して、光と影が交錯する複雑な物語を秘めているのです。

建造の経緯：古い高層ビルからの変貌

この場所には、かつて25階建ての高層ビルが建っていました。1968年に建てられたこの建物は、ロンドンにおける初期の高層建築の一つとして、長く街の風景を彩っていました。しかし、時代の流れとともに老朽化が進み、2006年に新しいビルの建設が許可されました。2008年、旧ビルの解体は、下層階から順にフロアを撤去するという、珍しい方法で行われ注目を集めました。これは、ビルの特殊な構造に起因するものでした。

新ビルの建設は2009年1月に地盤工事が開始され、2011年1月に本格的な建築工事がスタートしました。そして、2014年4月、ついに竣工。同年8月には内装が完成し、翌2015年1月、建物と屋上庭園「スカイガーデン」が正式にオープンしました。

特徴：膨らんだデザインと機能性

20フェンチャーチ・ストリートの最も際立った特徴は、ウルグアイ人建築家ラファエル・ヴィニオリによる、上部が膨らんだ独特のデザインです。このデザインは、高層階の貴重な面積を最大限に確保し、地上階には広い歩道を確保することに成功しました。しかし、一方で、単に賃料収入の最大化を優先した結果ではないかとの見方もあります。

ビルは地上2階分の高さのロビー、3階から34階までのオフィスフロア、そして最上階3フロアに広がる「スカイガーデン」で構成されています。「ロンドンで最も高い位置にある公園」を謳うスカイガーデンには、レストラン、バー、展望台、イベントスペースなどが設置され、多くの人々を引きつけています。

環境への取り組み：高い評価と持続可能性

20フェンチャーチ・ストリートは、環境性能評価において高い評価を受けています。BREEAM評価では「Excellent」を獲得し、屋上には太陽光発電パネルを設置して年間27,300kWhの電力を生成しています。さらに、欧州の省エネ性能証明書制度EPC-Bを取得し、森林管理協議会（FSC）の認証も取得するなど、環境配慮への取り組みは高く評価されています。

問題点：日光反射とビル風

しかし、このビルは問題点も抱えています。建設中から懸念されていたのが、南側の窓による日光の反射です。2013年9月には、駐車中の車の外装が溶けるという事故が発生し、ビルの窓が凹面鏡のように日光を集約したことが原因だと判明しました。他にも、自転車のサドルや商店のドアマットが焦げるなどの被害が報告されています。この問題を受け、開発業者は南側の窓に日光を反射しない素材を取り付けるなどの対策を講じました。

もう一つの問題点は、ビル風です。独特の形状が原因と考えられる強いビル風が、周辺に影響を与えていると指摘されています。この問題を受け、シティ・オブ・ロンドンは、高層建築の建造にあたってより厳しい事前検査を行うようガイドラインを発表しました。

所有権の変遷：香港企業による買収

当初、ランド・セキュリティーズ社とカナリー・ワーフ社の共同所有だった20フェンチャーチ・ストリートですが、2017年7月には、香港の李錦記グループが12.8億ポンドで買収したと報じられました。この買収は、同ビルの価値と将来性を示すものと言えるでしょう。

まとめ：未来への展望

20フェンチャーチ・ストリートは、革新的なデザインと環境への配慮が評価される一方で、日光反射やビル風といった課題も抱える、複雑な建築物です。その存在は、現代建築が直面する課題と可能性を象徴していると言えるでしょう。今後の運用と、同様の課題を抱える高層建築の設計・建設に、貴重な教訓を与える存在となることは間違いありません。

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