2007年ポーランド議会選挙

2007年ポーランド議会選挙：政権交代と新たな政治状況

2007年10月21日、ポーランド共和国において、セイム（下院）とセナト（上院）の議員を選出するための議会選挙が実施されました。セイムの解散に伴い、予定より2年前倒しでの開催となりました。この選挙は、それまでの政権与党の敗北、野党による政権獲得、そして大統領と議会における権力分立という、ポーランド政治史において重要な転換点となりました。

選挙の背景と主要勢力

選挙当時、大統領はレフ・カチンスキ氏（法と正義）、首相はヤロスワフ・カチンスキ氏（法と正義）が務めていました。両氏は兄弟であり、法と正義（PiS）を中心とした連立政権を率いていました。この連立政権には、自衛（Samoobrona）とポーランド家族同盟（LPR）も参加していましたが、2007年8月には自衛が連立を離脱するなど、政権内部の不安定さが顕著になっていました。

一方、野党陣営では、市民プラットフォーム（PO）が最大勢力として台頭していました。POは中道右派を標榜し、2001年と2005年の選挙で支持を伸ばしていました。また、民主左翼連合（SLD）を中心とした左派連合「左翼と民主主義」（LiD）、そして農村部を基盤とするポーランド農民党（PSL）なども主要な勢力として存在していました。さらに、ドイツ系少数民族政党であるドイツ少数民族（MN）も、議席獲得を目指して選挙戦に参加しました。

選挙制度と選挙権

セイムは460議席、セナトは100議席で構成され、それぞれ4年の任期でした。セイム選挙は比例代表制（41選挙区、非拘束名簿式）、セナト選挙は大選挙区制が採用されました。選挙権は満18歳以上のポーランド国民に、セイムの被選挙権は満21歳以上、セナトの被選挙権は満30歳以上のポーランド国民に与えられていました。

選挙結果と政局

選挙の結果、市民プラットフォーム（PO）がセイムにおいて206議席を獲得し、最大勢力となりました。一方、それまでの与党であった法と正義（PiS）は166議席を獲得し、結党以来最高の議席数でしたが、野党に転落しました。POは、ポーランド農民党（PSL）と連立政権を樹立し、政権交代が実現しました。

一方、それまで与党に属していた自衛（Samoobrona）とポーランド家族同盟（LPR）は、議席確保に必要な得票率5％を下回り、議席を失いました。これは、汚職スキャンダルや党内対立などの影響によるものと考えられています。また、左派連合LiDも、セイムで53議席を獲得するにとどまり、セナトでは議席を獲得できませんでした。

この選挙結果により、大統領レフ・カチンスキ氏（法と正義）と、PO・PSLによる新政権との間で、大統領と議会が異なる勢力によって構成される「コアビタシオン」状態が生じることとなりました。この状態は、今後のポーランドの政治において、様々な課題と緊張をもたらすことになりました。

少数民族政党

ドイツ少数民族（MN）は、前回選挙に引き続き、議席阻止線である5％条項が適用されない少数民族政党として選挙に参加し、議席を獲得しました。

まとめ

2007年のポーランド議会選挙は、政権交代と、それに伴う大統領と議会間の権力分立という、ポーランド政治にとって極めて重要な転換点となりました。選挙の結果、市民プラットフォームを中心とした新政権が誕生しましたが、コアビタシオン状態は、今後の政治状況に大きな影響を与えることになりました。また、この選挙は、主要政党の勢力図の変化や、新興政党の台頭、既存政党の衰退といった、ポーランド政治のダイナミズムを如実に示すものとなりました。選挙における投票率は53.88％でした。

もう一度検索