2010年代後半のアルゼンチン通貨危機

2010年代後半のアルゼンチン通貨危機

本項では、2010年代後半にアルゼンチンを襲った深刻な通貨危機について解説します。度重なる経済危機に見舞われてきたアルゼンチンですが、この時期には再び通貨が暴落し、国民生活に大きな影響を与えました。

ペソの暴落と経済状況の悪化

2015年12月、マウリシオ・マクリ大統領の就任後、為替レートが自由化され、アルゼンチン・ペソは対ドルで大幅に下落しました。当初1ドル9.83ペソだったものが、13.95ペソへと42％も下落。その後も下落は止まらず、2018年8月末には1ドル40ペソ、2019年10月末には59.40ペソにまで暴落しました。

中央銀行は為替介入や金利引き上げなどの対策を講じましたが、ペソの下落を食い止めることはできませんでした。また、国債Lebacsを発行し、多額の利子を支払ったことで累積債務が増加、財政赤字も拡大しました。

双子の赤字と高インフレ

2017年、アルゼンチンは対外赤字、財政赤字、経常赤字のすべてにおいて、世界でワースト上位にランクインしました。特に、ペソの下落に伴い、インフレ率が急上昇し、世界で最もインフレ率の高い国の1つとなりました。

金利も高騰し、名目金利は40％に達し、世界最高水準となりました。経済成長率は鈍化し、ラテンアメリカ地域の中でも低い水準にとどまりました。

国民生活への影響

通貨危機は、アルゼンチン国民の生活に深刻な影響を与えました。貧困層が急増し、食糧問題も深刻化しました。最低賃金が大幅に下落し、多くの人々が生活苦に陥りました。

政府の対応とIMFの支援

マクリ政権は、公共料金の値上げや財政緊縮策を実施しましたが、国民の不満は高まりました。政府はIMFに金融支援を要請し、過去最大規模の融資を受けましたが、経済状況は改善しませんでした。

危機の余波とデフォルト

2018年以降、約480万人が貧困層に転落し、国民全体の貧困率は大幅に上昇しました。資本逃避も深刻化し、国の債務は急増しました。

2019年、政府は債務の支払いを一方的に延期し、「選択的デフォルト」と呼ばれる状態に陥りました。

まとめ

2010年代後半のアルゼンチン通貨危機は、ペソの暴落、インフレ、貧困の拡大など、深刻な経済的・社会的問題を引き起こしました。政府やIMFの対策も効果を発揮せず、国民生活は大きな打撃を受けました。この危機は、アルゼンチンの経済構造の脆弱性を浮き彫りにするとともに、今後の経済政策のあり方に大きな課題を突きつけました。

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