2018年問題

2018年問題

「2018年問題（2018ねんもんだい）」とは、日本の大学入試を取り巻く環境において用いられた表現です。主に、18歳になる年齢の人口が2018年頃から減少に転じると予測されたことに起因し、これによって多くの私立大学、特に定員割れしている大学が経営的に困難に陥ったり、閉鎖を余儀なくされたりする可能性があると懸念された大学経営上の課題を指します。

問題の背景と懸念

1992年（平成4年）頃をピークとする、いわゆる「受験戦争」が激しかった時期以降、日本の18歳人口は一貫して減少し続けていました。しかし、2009年頃までは大学への進学率が上昇を続けていたため、18歳人口が減少しても、実際に大学に進学する者の数は増加傾向にあり、進学を希望するほとんどの人が大学に入れる「大学全入時代」に近い状況が続いていました。2009年（平成21年）から2017年（平成29年）にかけては、18歳人口はほぼ横ばいで推移すると予測されていました。

ところが、2018年以降は18歳人口が再び減少に向かうと推計され、大学進学率についても、それまでのような顕著な伸びは見込めないと考えられていました。この二つの要因が重なることで、2018年以降は大学に進学する者の絶対数が減少するだろうと予測されたことが、「2018年問題」の中核をなす懸念でした。特に、多くの私立大学が学生確保に苦慮し、経営の存続に関わる事態に直面するのではないかと危惧されました。

過去の類似問題と大学の対応

「2018年問題」に先立つ時期にも、2009年頃に同様の学生数減少による大学経営への懸念（「2009年問題」などと呼ばれた）が存在しました。その結果、募集を停止した大学や、民事再生法を適用して経営再建を目指した大学はありましたが、正規の四年制大学が完全に閉鎖に至った事例は限定的でした。

しかし、「2018年問題」ではより厳しい状況が予測されたため、これを目前にした多くの大学では、生き残りをかけて様々な改革が進められました。この動きは、規模の大きな大学や長い歴史を持つ著名な大学においても例外ではなく、優秀な学生を確保するためには、これまで以上の努力が必要だと考えられるようになりました。

同時に、大学入試の選抜方法についても議論が進みました。2010年代前半にはすでに、文部科学省が多くの大学で推薦入試やAO入試による入学者の割合が増加している点を指摘していました。これらの多様な選抜方法には、多様な学生を受け入れるメリットがある一方で、入学者間の学力にばらつきを生じさせるというデメリットも指摘されており、入学者の質の確保を目的とした学力試験のあり方（後に大学入学共通テストなどに繋がる高大接続テストの構想）が求められるようになりました。このように、2018年以降は大学受験そのものも大きな変化を迎えると予想されていたことから、各大学には改革への対応が強く求められていました。

実際の展開と結論

結果として、「2018年問題」で懸念された「受験生人口が急激に減少し、多くの大学が入学者確保に苦しむ」という予測とは異なる展開を迎えます。実際には、18歳人口は予測されたほどのペースで大きく減少せず、大学への進学率は過去最高水準（入力情報では49.7%とある）を記録するなど、むしろ上昇傾向が続きました。さらに、2020年度からの大学入学共通テストの導入、大学の定員管理の厳格化、そして特に東京23区内の大学の定員抑制といった、学生の流動や大学の経営に影響を与える政策的な要因も重なりました。

これらの要因が複合的に作用した結果、懸念されていたような私立大学の経営危機は、全体としては回避される形となりました。定員を満たせない、すなわち定員充足率が80%未満の私立大学の数は、2014年の122校（全体の21.1%）がピークであり、その後は減少に転じ、2015年以降は114校（19.7%）、117校（20.3%）、90校（15.5%）と推移し、2019年には51校（全体の8.6%）まで大きく減少しました。

こうした実際の状況から、「2018年問題」で懸念されていたような大学経営の危機は、結果として杞憂であったと評価されることが多くなっています。例えば、2018年に経営破綻によって閉鎖された私立大学は一校もありませんでした。また、2000年以降に経営難を理由として廃止された、または民事再生法を申請した四年制私立大学も14校にとどまっています。このことから、同様に懸念されることのある「大学倒産時代」と呼ばれるような状況も、少なくとも2025年時点では到来していないと言えます。

関連項目：大学倒産時代'>大学倒産時代

もう一度検索