2019年欧州議会議員選挙

2019年欧州議会議員選挙：EUの未来を問う激戦

2019年5月23日から26日にかけて、欧州連合加盟28ヶ国で欧州議会議員選挙が実施されました。751議席を巡り、各国の有権者が投票を行いました。これは、1979年の初回選挙以来9回目の直接選挙であり、欧州統合の進展、そして各国の政治情勢を反映する重要な選挙となりました。

この選挙は、本来、イギリスのEU離脱後の最初の選挙として予定されていました。離脱後の議員定数配分も、イギリスを除外して705名に削減することが決定されていました。しかし、イギリス議会での離脱協定承認が難航し、離脱期日が延期されたため、選挙実施日までにイギリスはEUに留まりました。そのため、議員定数は2014年選挙と同様の配分が適用されることとなり、イギリスの議員も選出されました。

選挙結果はもちろんのこと、選挙後に行われた会派（グループ）の再編も、この選挙を特徴づける大きな出来事でした。いくつかの会派が合流・改称し、新たな勢力が誕生した一方、消滅した会派もありました。この再編は、欧州議会の政治勢力図を大きく変え、今後のEU政治に大きな影響を与えることになりました。

具体的には、以下の2つの新会派が誕生しました。

1. 欧州刷新: 従来の欧州自由民主同盟グループに、フランス大統領エマニュエル・マクロンの与党である共和国前進などが合流して誕生した会派です。中道寄りの中道右派から中道左派のグループで、親EU、市場経済重視の立場をとります。

2. アイデンティティと民主主義: 従来の国家と自由の欧州に、ドイツのための選択肢などが合流して誕生した会派です。北部同盟（イタリア）、国民連合（フランス）、オーストリア自由党など、民族主義、欧州懐疑主義的な主張をする政党が中心となったグループです。極右、民族主義、欧州懐疑主義といった立場を共有する政党が多数を占めています。

一方、「7つ以上のEU加盟国から選出された議員が必要」という要件を満たせなかった自由と直接民主主義のヨーロッパは結成に至らず、イギリス選挙区で第1党となったブレグジット党や、イタリア選挙区で第2党となった五つ星運動などは、欧州議会において無所属となりました。

この選挙と、それに続く会派の再編は、EUの政治的風景を劇的に変えました。欧州統合の推進派と懐疑派の対立、民族主義の台頭、そして新たな政治勢力の出現など、様々な要素が絡み合い、今後のEUの進路に大きな影響を与え続けています。イギリスのEU離脱という未曽有の事態を背景に、この選挙はEUの未来を占う重要な転換点となったのです。 今後、これらの新旧会派がどのように欧州議会の議論をリードし、EU政策に影響を与えるのか、注目が集まります。

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