2020年のMotoGP

2020 MotoGP世界選手権：波乱とドラマのシーズン

2020年のFIMロードレース世界選手権MotoGPクラスは、72回目の大会として開催されました。シーズンを通して、マルク・マルケスの負傷、新型コロナウイルス感染症の世界的流行、そしてヤマハのエンジンに関する不正問題など、数々の予想外の出来事がチャンピオンシップを大きく揺るがしました。

マルク・マルケスの負傷とホンダの苦戦

前年チャンピオン、マルク・マルケスとレプソル・ホンダ・チームは、シーズン序盤から優位に立つことを期待されていましたが、第2戦スペインGPでクラッシュ、右上腕骨を骨折する重傷を負いました。手術後、第3戦アンダルシアGPに強行出場を試みましたが、予選で1周走行しただけでリタイア。骨折の再手術を余儀なくされ、シーズン全戦を欠場することとなり、ホンダはライダー、マニュファクチャラー、チームの3冠を逃し、1981年以来となる最高峰クラスでの未勝利シーズンとなりました。

大接戦のチャンピオンシップ争い

シーズン序盤はファビオ・クアルタラロが2連勝でリードしましたが、ミシュランによるリアタイヤ構造の変更などにより各メーカーが苦戦。前半戦終了時点では6名のライダーが優勝を挙げ、首位から25ポイント圏内に9名という、非常に激しいチャンピオンシップ争いが展開されました。

中盤以降はジョアン・ミルが頭角を現し、3戦連続表彰台を獲得。そして、第14戦バレンシアGPでついにタイトルを獲得しました。これは、スズキにとって2000年以来20年ぶり、MotoGPクラスとしては初のタイトル獲得となりました。また、チーム・スズキ・エクスターもチーム部門で初優勝を飾るなど、スズキ勢にとって記憶に残るシーズンとなりました。コンストラクターズタイトルはドゥカティが獲得し、2007年以来13年ぶりの戴冠となりました。

新記録と快挙

このシーズンでは多くの新記録や快挙が生まれました。ファビオ・クアルタラロ、ブラッド・ビンダー、ミゲル・オリベイラ、フランコ・モルビデリ、ジョアン・ミルの5名が最高峰クラスで初優勝。特にブラッド・ビンダーの優勝は、KTMファクトリー参戦後初優勝であり、参戦1年目での優勝は歴代4人目という快挙でした。

ペトロナス・ヤマハSRT、レッドブルKTMファクトリーレーシング、レッドブルKTMテック3の3チームも最高峰クラス初優勝を達成。ヤマハのサテライトチームの優勝は20年ぶりでした。ペトロナス・ヤマハSRTは6勝を挙げ、チーム部門で2位を獲得する活躍を見せました。

日本人ライダーでは中上貴晶が第12戦テルエルGPでポールポジションを獲得。これは、2004年の玉田誠以来16年ぶりの快挙でした。

新型コロナウイルスの影響

当初20戦を予定していたシーズンカレンダーは、新型コロナウイルス感染症の流行により大きな影響を受けました。多くのグランプリが中止や延期となり、最終的には15戦に短縮されました。

また、バレンティーノ・ロッシやイケル・レクオナなど、多くのライダーが新型コロナウイルスに感染し、レースを欠場する事態となりました。

ヤマハのエンジン不正問題

ヤマハはエンジンの技術的変更に関するプロトコル違反により、コンストラクターズとチーム部門でポイントを剥奪されるペナルティを受けました。

チームとライダーの変更

シーズン中にはいくつかのチームとライダーの変更がありました。レアーレ・アヴィンティア・レーシングはエスポンソラマ・レーシングに改名。ブラッド・ビンダー、アレックス・マルケス、イケル・レクオナといったライダーがMotoGPクラスにステップアップ。ヨハン・ザルコはレッドブルKTMファクトリーレーシングとの契約を解消し、アヴィンティアに移籍しました。アンドレア・イアンノーネはドーピング違反により出場停止となりました。

シーズン途中からの代役ライダー

イアンノーネの出場停止や、マルケス、バニャイアなどの負傷、そして新型コロナウイルス感染により、多くの代役ライダーが起用されました。ブラッドリー・スミス、ステファン・ブラドル、ミケーレ・ピロ、ロレンツォ・サヴァドーリ、ギャレット・ガーロフ、ミカ・カリオらが、それぞれのレースで代役を務めました。

シーズンカレンダーの変更

新型コロナウイルスの影響により、当初予定されていたカレンダーは大きく変更されました。いくつかのグランプリが中止、延期となり、最終的には欧州のみで開催されることとなりました。日本グランプリも中止となりました。

まとめ

2020年のMotoGP世界選手権は、マルク・マルケスの負傷、新型コロナウイルスの影響、ヤマハのエンジン不正問題など、多くの困難に見舞われたシーズンでした。しかし、その中で生まれた数々のドラマや、新たな才能の台頭、そして接戦のチャンピオンシップ争いは、観る者を魅了しました。このシーズンは、MotoGPの歴史に刻まれる、記憶に残る1年となったと言えるでしょう。

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