ジョアン・ミル

ジョアン・ミル：ローラースケートからMotoGP王者へ

ジョアン・ミル・マイラタ（1997年9月1日生まれ）は、スペイン・バレアレス諸島パルマ・デ・マヨルカ出身のオートバイレーサーです。181cmの長身と68kgの体重を誇り、類まれな才能と努力で世界の頂点に立ちました。

少年時代とレースへの道

6歳で初めてオートバイに触れたミルですが、本格的にレースの世界に足を踏み入れたのは10歳の頃でした。世界GP125ccクラスで活躍した叔父、ジョアン・ペレロの影響を大きく受けた彼は、幼少期をローラースケート、スケートボード、キックスクーターと共に過ごしました。父親が経営するローラースケートショップで育った環境が、彼のバランス感覚や運動能力を養ったのかもしれません。

その後、チーチョ・ロレンソ（ホルヘ・ロレンソの父）が運営するスクールや、バレアレス・モーターサイクル連盟のスクールでライディング技術を磨きます。バレアレス選手権やバンキアカップなどのレースで経験を積み重ね、着実に実力を付けていきました。

若手ライダーの登竜門であるレッドブルMotoGPルーキーズカップへの参戦を経て、2015年にはFIM CEVレプソルMoto3ジュニア世界選手権に参戦し、4勝を挙げてランキング4位を獲得。同年のMotoGP第16戦オーストラリアGPでは、尾野弘樹選手の代役としてMoto3クラスに世界選手権デビューを果たしました。

ロードレース世界選手権での活躍

Moto3クラス

2016年、レオパード・レーシングよりMoto3クラスにフル参戦。前半戦は苦戦しましたが、第10戦オーストリアGPでは見事ポールポジションから優勝を飾ります。その後も安定した走りを見せ、年間ランキング5位を獲得。ルーキー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれました。

2017年は、マシンをホンダ・NSF250RWに変更。全18戦中17戦でポイントを獲得するという驚異的な安定感をみせ、10勝、2位2回、3位1回という圧倒的な成績でMoto3クラスチャンピオンを獲得しました。軽量クラスで年間2桁勝利を達成したのは、バレンティーノ・ロッシ（1997年）とマルク・マルケス（2010年）以来の快挙でした。

Moto2クラス

2018年はMoto2クラスへステップアップ。マークVDSレーシングチームに加入し、4度の表彰台を獲得。年間ランキング6位となり、2年連続でルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。シーズン中盤には、既に2019年からMotoGPクラスへのステップアップを発表。ホンダとの仮契約を破棄し、スズキからの好条件のオファーを受け入れました。

MotoGPクラス

2019年、チーム・スズキ・エクスターに加入し、アレックス・リンスのチームメイトとしてMotoGPクラスに参戦。チェコGP後のテストで転倒し、肺挫傷により2戦を欠場するアクシデントもありましたが、復帰後は着実にポイントを獲得。初年度はランキング12位で終えました。

2020年、スズキでの2年目。新型コロナウイルスの影響でカレンダーが変更され、マルク・マルケスの長期欠場という異例のシーズンとなりました。そんな中、ミルは優勝争いに絡む活躍を見せます。序盤は転倒リタイアもありましたが、第5戦オーストリアGPで初表彰台を獲得。その後は表彰台の常連となり、アラゴンGP終了時点でポイントリーダーに立ちます。そして、第13戦ヨーロッパGPでついにMotoGP初優勝を達成。続く第14戦バレンシアGPでシリーズチャンピオンを獲得しました。23歳75日での最高峰クラス制覇は、史上7番目の若さでした。

2021年はチャンピオンとしてシーズンを迎えましたが、未勝利に終わりました。2022年はスズキの撤退が決まり、来季のシートは不透明な状況が続きました。しかし、8月30日、ホンダと2年契約を締結。レプソル・ホンダチームで、マルク・マルケスとチームメイトとして戦うことになりました。シーズン終盤には怪我によりレースを欠場しましたが、その後の動向にも注目が集まります。

人物像

ミルは、スペイン語の「J」の発音から「ホアン・ミル」と呼ばれることもありますが、本人は「ジョアン」と呼ぶことを希望しています。出身地はホルヘ・ロレンソと同じマヨルカ島ですが、憧れのライダーはバレンティーノ・ロッシ。また、ラファエル・ナダルのコート内外での姿勢を高く評価しています。レース前には、新品の青いパンツを履き、靴下やライディングスーツを右から着るという独自のルーティンを持っているそうです。

ステップアップの過程で苦戦するライダーも多い中、ミルは環境に早く適応し、2年目にはチャンピオン争いを演じました。クレバーでハイレベルなライディングをコンスタントにこなせるライダーとして高く評価されています。2017年のMoto3ではポールポジション1回ながら10勝、2020年のMotoGPでは1勝でチャンピオンという、異例の実績を残しました。

今後の活躍に期待

ローラースケートから始まったミルのモータースポーツ人生は、数々の困難を乗り越え、世界一の座へと導きました。レプソルホンダでの新たな挑戦、そして、今後の更なる活躍に期待しましょう。

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