2021 AV7

2021 AV7

2021 AV7は、地球に比較的近い軌道を持つ小惑星の一つで、アポロ群に分類される天体です。その存在は、2021年1月15日にチリ北部のサンペドロ・デ・アタカマにて、天文学者のアラン・モーリー氏とG. Attard氏によって初めて確認されました。推定される直径は450メートルから1,000メートルとされており、このサイズのため、潜在的に危険な小惑星（PHA）のカテゴリーに含まれています。

発見の経緯

この小惑星が発見されたのは、チリのサンペドロ・デ・アタカマでの観測中でした。2021年1月15日、おおいぬ座の方向で、視等級19.8の天体として捉えられました。当時の観測では、地球からの距離は約0.656天文単位（約9810万キロメートル）であり、天空を1分間に1.15秒角という速度で移動している様子が記録されました。

最初の発見後、この天体は小惑星センターの地球近傍天体確認ページ（NEOCP）に「P11bC3C」という仮称でリストアップされました。続く3日間にわたり、アリゾナ大学のスペースウォッチ計画、キットピーク国立天文台、スチュワード天文台、レモン山など、複数の観測施設で追加の観測（フォローアップ観測）が実施されました。これらの観測によって天体の存在と軌道の一部が確認され、2021年1月18日には正式に「2021 AV7」として公表されました。

軌道の特徴と分類

2021 AV7の軌道は、わずか5日間の短い期間の観測データに基づいて計算されたため、精度には限界があります。その不確実性は、不確定パラメータ（Uパラメータ）が8という高い値であることからも示されています。将来にわたってより正確な軌道を決定するためには、地球から見て太陽の反対方向に来る「衝」のタイミングでの追加観測が不可欠となります。

現在の計算によると、2021 AV7は平均的に太陽から約3.05天文単位の距離を、約5.3年の周期で公転しています。軌道は非常に偏平しており、その離心率は約0.71と高い値を示します。また、太陽系の惑星が公転する黄道面に対して、軌道が約29度傾いていることも特徴です。

軌道の最も太陽に近い点（近日点）は約0.9天文単位で、これは地球の軌道のすぐ内側に位置します。最も遠い点（遠日点）は約5.2天文単位で、これは木星の軌道の近くに達します。このように、近日点が地球軌道の近くにあり、軌道が地球の軌道と交差することから、2021 AV7は地球近傍小惑星の中でも「アポロ群」に分類されています。

計算上、地球軌道との最小交差距離（MOID: Minimum Orbit Intersection Distance）はわずか1万5000キロメートルと非常に小さい値ですが、上述の通り軌道計算の不確実性が大きいため、この最小交差距離が将来の接近時にそのまま実現する可能性は低いと考えられています。現状の予測では、今後100年間のうちに、2021 AV7が地球から0.2天文単位（約3000万キロメートル）よりも近くに接近する可能性は低いとされています。

物理的特性

2021 AV7の物理的な性質のうち、最も特徴的なのはその推定サイズです。絶対等級が18.84であることから、等級と直径の変換式を用いてその大きさを推定できます。小惑星の表面がどれだけ光を反射するかを示す幾何アルベドの値を仮定することで、直径の範囲が導き出されます。

例えば、典型的な岩石質小惑星のアルベドである0.25を仮定した場合、直径は約450メートルと推定されます。一方、炭素質小惑星のような暗い表面を持つ天体で典型的なアルベド0.05を仮定すると、直径は約1,000メートルと推定されます。この450メートルから1,000メートルという推定直径は、惑星規模の災害を引き起こし得るサイズとされており、このため2021 AV7は潜在的に危険な小惑星として監視されています。

このように、2021 AV7は比較的新しく発見された地球近傍小惑星であり、そのサイズから注目される一方で、軌道計算の不確実性から今後の精密な観測が待たれる天体です。

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