2021 UA1

2021 UA1は、太陽の周りを巡る小さな岩石質の天体であり、地球の軌道の近くを通過する性質を持つことから、「地球近傍天体」（Near-Earth Object, NEO）として分類されています。その推定されるサイズはおよそ2メートル級とされており、これは小惑星としてはかなり小規模な部類に入ります。このような小さな天体が地球の近くを通過する事例は、地球周辺の宇宙環境を理解する上で重要なデータを提供します。

この天体が特に注目されたのは、2021年10月25日に発生した、地球への極めて近接した通過のためです。協定世界時（UT）の午前3時7分頃、2021 UA1は地球表面からわずか約3047キロメートルという、非常に短い距離を通過しました。これは、地上の観測地点から見て、地球の南極大陸の上空にあたる位置でした。一般的な人工衛星の軌道よりもはるかに低い位置を通過したことからも、この接近がいかに近かったかがわかります。

接近時の2021 UA1の観測は容易ではありませんでした。その小ささと相まって、見かけの明るさは14等級程度と推定されています。これは、肉眼はもちろんのこと、一般的なアマチュア向けの天体望遠鏡でも捉えるのが難しいほどの微弱な光であり、有名な準惑星である冥王星と同程度の明るさに相当します。さらに、2021 UA1が地球に接近してきた方向が、太陽のある方向とほぼ一致していたことも、この天体の早期発見を困難にしました。太陽の強い光の中に紛れてしまったため、残念ながら2021 UA1は地球に接近する前に発見されることはありませんでした。実際にこの天体の存在が確認され、観測データが取得されたのは、地球を既に通過した後、およそ4時間が経過してからでした。

2021年の地球への特異な接近は、2021 UA1の軌道に大きな影響を与えました。地球の強力な重力による摂動（他の天体の重力による軌道の乱れ）を受け、この小惑星が太陽の周りを回る公転軌道は根本的に変化したのです。接近前、2021 UA1は約356日の公転周期で太陽を回っていました。これは地球の公転周期（約365日）に近く、アテン群と呼ばれる地球近傍小惑星のグループに分類されていました。アテン群は、地球軌道の内側に軌道の大部分を持つか、平均距離が地球軌道より内側にあるグループです。

しかし、地球への接近とその後の軌道変更を経て、2021 UA1の公転周期は約413日へと延びました。この新しい軌道は、小惑星の分類を変更させることになりました。公転周期が1年以上となり、地球軌道と交差する軌道を持つようになったため、アポロ群と呼ばれる別の地球近傍小惑星のグループへと移行することになったのです。アポロ群は、地球軌道と交差する軌道を持ち、公転周期が1年以上の小惑星のグループです。

このように、地球への接近が小惑星の軌道や分類を変化させることは、天体力学的な相互作用の一例として興味深い現象です。2021 UA1の事例は、地球近傍天体の軌道変動と、太陽方向からの接近が観測上もたらす課題を示す具体的なケースとして記録されています。

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