2021年ダルアー攻勢

2021年ダルアー攻勢

2021年に発生したダルアー攻勢は、シリアのダルアー県において反体制派戦闘員とシリア政府軍との間で繰り広げられた激しい衝突のことを指します。この攻勢は、進行中のダルアー反乱の重要な一環として、特に政府軍に包囲されたダルアー・アル＝バラド周辺での戦闘が特徴的でした。

背景

ダルアー・アル＝バラドは、シリア政府に対する市民の蜂起が始まった地点でもあります。2011年3月に起こったこの蜂起は、シリア内戦の火種となり、その後の反体制派と政府軍の対立を深刻化させました。2018年には、シリア陸軍による攻勢で反体制派が大きな打撃を受け、その結果として和解協定が結ばれました。この合意により、反体制派は武器を政府軍に引き渡さざるを得なくなり、協定に反して過激派はイドリブ県に移送されました。しかし、シリア陸軍がすべての地域に完全に支配を及ぼすことができず、その結果、ダルアー県では暴力行為が増加しました。

2021年6月には、新しい和解協定の締結が試みられましたが、ロシアの要求が地域住民に拒否され、シリア陸軍はダルアー・アル＝バラドを包囲することになります。この包囲により、1万1000世帯以上の住民が困難な状況に置かれ、食料や水の価格が急上昇し、深刻な人道的危機に直面しました。想定された交渉もついには成立せず、地域の安定はますます危うくなっていきました。

衝突の経緯

ダルアー市における交渉の合意にもかかわらず、2021年7月29日、シリア陸軍は反政府勢力の拠点に向けて砲撃を開始しました。この攻撃は、和解協定に違反したとされる反体制派への軍事作戦とされていました。国軍の指導者たちは、地域の名士が武器を平和的に引き渡すと約束したにもかかわらず、その合意が実現しなかったことを問題視しました。一方で反体制派は、政府が進行中の合意に違反していると主張し、結果的に衝突が激化しました。

反体制派は、政府の行動に対して報復攻撃を行い、ダルアーの各地で制圧が進行しました。これには、元自由シリア軍の戦闘員に加え、政府に逆らう行動をとる元反対派の戦闘員も含まれていました。しかし、シリア陸軍は第4機甲師団を中心に反乱鎮圧作戦を展開し、緊張は高まり続けました。さらに、両軍間での停戦合意も実現に至らず、徴兵された兵士たちの間で厳しい戦闘が続く状況が続きました。

7月末から8月初旬にかけて断続的な停戦が試みられるも、衝突は続き、シリア軍は様々な地点で砲撃を行いました。8月5日には、反体制派がシリア軍の車両に攻撃を行い、さらなる死傷者が出ました。その後もダルアーでは激しい衝突が続き、シリア陸軍は包囲の解除や交渉を試み、反体制派との間での武力行使が続いていきました。

さらに、8月19日などに発生したIED攻撃や、ダルアーの中心部での衝突は、民間人にも多大な被害を及ぼしました。シリア陸軍の兵士たちや反体制派の戦闘員の間での衝突は続き、9月には別の停戦協定も交渉されましたが、その後も状況は収束せず、次々と一致しない報告や約束がなされました。

反応

このような状況の中、反体制派の支配する地域では抗議行動が行われました。特にイドリブやアル＝バーブでは、ダルアーの反体制派を支持する声が高まり、状況に対する不満が広がっていました。シリア政府による包囲と攻撃に対する怒りから、地域住民の間では抗議や封鎖などの行動が見られました。この攻勢はシリア全体における政治的な緊張を再び浮き彫りにし、内戦の先行きの不透明さを示すものでした。

このように、2021年のダルアー攻勢はシリア内戦の中でも特に激しい衝突の一つであり、長期化する戦闘の焦点となりました。

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