2022年ポーランドでのミサイル爆発

2022年11月15日、ポーランドのプシェヴォドゥフ村にミサイルが着弾し、2名の市民が犠牲になるという衝撃的な事件が発生しました。この事件は、ロシアがウクライナの都市やエネルギー施設への大規模な攻撃を行っていた最中に起こり、NATO加盟国領内へのミサイル着弾としては初の事例となりました。当初、ミサイルの出所は不明とされていましたが、その後の調査で、ウクライナ軍がロシアのミサイルを迎撃するために発射した防空ミサイルである可能性が指摘されています。

事件の背景

この事件は、ロシア軍がウクライナ全土のインフラに対して過去最大規模の攻撃を行った日に発生しました。ウクライナ空軍司令部の発表によると、ロシア軍は11月15日に96もの兵器をウクライナに向けて発射しました。これには、Kh-555やKh-101などの巡航ミサイル、Kh-59誘導ミサイル、さらには攻撃ドローンやUAVが含まれています。経済紙の報道によれば、これらの兵器の総額は5～10億ドルに相当すると見積もられています。

爆発の発生

ミサイルは村の穀物乾燥施設に着弾し、爆発により2名の市民が死亡しました。ポーランド当局は当初、爆発の原因を不明としていましたが、複数の報道機関が、2発のミサイルが村に落下したと伝えました。しかし、その後の報告では、着弾したミサイルは1発のみであったことが示されています。NATO加盟国は、事件発生直後から証拠の収集と調査を開始しました。

事件の調査

ポーランド政府の報道官は、事件発生後、国家安全保障会議を招集し、現地調査を開始したと発表しました。初期の報道では、ミサイルの起源や性質について様々な情報が飛び交いました。ポーランド外務省は当初、ミサイルが「ロシア製」であると発表しましたが、アメリカの情報当局は、初期評価で、ミサイルがウクライナ軍が発射したものである可能性が高いとの見解を示しました。また、ミサイルの残骸の写真から、S-300システムである可能性も指摘されました。S-300は、ウクライナとロシアの両軍が使用しており、ウクライナは主に地対空ミサイルとして、ロシアは地対地ミサイルとして利用しています。ポーランドの報道関係者は、ミサイルが撃墜されたロケットの残骸であるとする情報筋の主張も報じました。

その後、ポーランド国際政策局長のヤクブ・クモッチは、ロシアのミサイルを撃墜するための迎撃ミサイルが目標に命中せず、自爆システムが機能しなかったことが悲劇の原因であると述べました。また、ポーランド当局は、ウクライナの調査官が爆発現場への立ち入りを許可される可能性を示唆しましたが、最終的にはポーランド検察庁がウクライナ側の調査協力を拒否しました。

各国の反応

ポーランド

ポーランド首相は、事件発生後直ちに国家安全保障・防衛問題委員会の緊急会合を招集し、一部の軍部隊の警戒レベルを引き上げました。ポーランド大統領は、NATO事務総長と北大西洋条約第4条の発動の可能性について協議し、外務省はロシア大使を呼び出し、詳細な説明を求めました。大統領は、「誰がミサイルを発射したのかについて、今のところ決定的な証拠はない」と慎重な姿勢を示しました。

ロシア

ロシア国防省は、ロシアのミサイルがポーランドを攻撃したとの報道を否定し、「状況のエスカレートを目的とした意図的な挑発」であると主張しました。また、ウクライナへのミサイル攻撃はポーランド国境から35キロ以上離れており、現場の写真はウクライナ空軍のS-300防空システムの構成部分であると指摘しました。ロシア外務省は、ポーランド大使を呼び出して協議を行いました。

ウクライナ

ウクライナのゼレンスキー大統領は、当初「ロシアのミサイルがポーランドを攻撃した」と非難し、集団安全保障に対するロシアの攻撃であると主張しました。しかし、その後、ウクライナが迎撃ミサイルを発射した可能性にも言及し、「100%は分からない」と慎重な姿勢に転じました。ウクライナは、爆発現場への立ち入り調査に参加する権利を主張しました。ウクライナ大統領顧問は、ヨーロッパ諸国がウクライナの「上空を閉じる」べきだと主張しました。

NATO当局と加盟国

NATO事務総長は、ポーランドに着弾したミサイルがウクライナの迎撃ミサイルの可能性が高いという認識を示しましたが、最終的な責任はロシアにあると強調しました。アメリカ国防総省は、ロシアのミサイルがポーランドに着弾したという報道を認識しているものの、現時点では裏付ける情報を持っていないと発表しました。各NATO加盟国はポーランドとの連帯を表明し、同盟国としての防衛義務を果たす姿勢を示しました。

その他の反応

欧州理事会議長は、事件の報告に「ショックを受けた」と述べ、欧州連合加盟国がポーランドを支持することを表明しました。モルドバの外務大臣は、ポーランドとの連帯を表明し、ポーランド当局と連絡を取り合っていると述べました。また、モルドバでは、過去にウクライナからのミサイル残骸が落下する事件が複数回発生しており、今回の事件との類似性も指摘されました。