欧州理事会

欧州理事会：EUの政治的推進力

欧州理事会は、欧州連合（EU）の主要機関の一つであり、加盟国の国家元首または政府の長、欧州理事会議長、そして欧州委員会委員長によって構成されています。EU外務・安全保障政策上級代表も会合に出席し、議事進行は欧州理事会議長が担います。2019年12月からはシャルル・ミシェル氏が議長を務めています。

欧州理事会は、EUの政策決定において重要な役割を果たしていますが、立法権は持ちません。その役割は、EU全体の政治的指針を策定し、統合プロセスを推進することにあります。その決定は、EUの一般的な方向性を定め、各国の政策に大きな影響を与えます。

会合は通常、ブリュッセルの欧州連合理事会の本拠地であるユストゥス・リプシウスで開催され、少なくとも半年間に2回は開催されます。

歴史：非公式会合から正式機関へ

欧州理事会の前身となる会合は、1961年2月にパリ、同年7月にボンで開催された、EU加盟国の指導者による非公式会合でした。これは、当時のフランス大統領シャルル・ド・ゴール氏が、超国家主義的な共同体の運営に不満を持っていたことが背景にあります。

その後も不定期に首脳会合が開かれ、1969年のハーグ首脳会議ではイギリスのEU加盟が合意され、経済分野だけでなく外交政策における協力も決定されました。1974年から1988年にかけては、首脳会議が定例化され、1975年11月にはダブリンで初めての「理事会」会合が開催されました。

1987年には単一欧州議定書によって基本条約に規定され、その後欧州連合条約においてその役割が明確に定められました。2002年からは、会合の開催地は原則としてブリュッセルとなっています。

欧州理事会の会合は、EUの歴史における数々の転換点とも深く関わっています。1969年のハーグでの外交政策決定や拡大問題、1974年のパリでの欧州理事会創設決定、1991年のマーストリヒト条約署名など、重要な決定が数多く下されてきました。リスボン条約の発効により、欧州理事会はEUの正式な機関として位置付けられ、常任の議長ポストも設置されました。それ以前は、欧州連合理事会議長国の首脳が輪番で議長を務めていました。

権能：EU政策指針の策定と影響力

欧州理事会は、基本条約で定められたEUの機関であり、リスボン条約によってその役割が「連合の発展に必要な推進力を与える」機関として明確化されました。法的な権限は持ちませんが、加盟国の指導者によって構成されているため、強い影響力を持っています。

欧州理事会の役割は、EU政策指針の策定にとどまりません。未解決議題の決着、対外的な活動、重要文書の批准、基本条約の修正協議への関与など、幅広い活動を行っています。加盟国の指導者によって構成されていることから、行政権を伴い、条約に規定されていない分野、例えば外交政策においても大きな影響力を持っています。欧州理事会議長や欧州委員会委員長、外務・安全保障政策上級代表の指名、さらには加盟資格の停止といった決定権も有しています。また、緊急停止手続きを通じて、欧州連合理事会で意見が分かれた法案を欧州理事会に持ち込むことも可能です。

構成：多様な参加者と厳格な運営

欧州理事会は、加盟国の国家元首または政府首脳、欧州理事会議長、欧州委員会委員長（ただし投票権なし）で構成されます。会合には各国の外相も出席し、欧州委員会委員長は委員を同伴することがあります。必要に応じて、国内の指導的立場にある人物も参加可能です。欧州連合理事会事務総長や欧州議会議長も出席します。

会議室への立ち入りは厳しく制限されており、各国の代表団は2名までとされています。首脳はボタンを押して隣室に控える常設代表に助言を求めることができます。また、通訳も会議に必要不可欠です。構成員については厳密な規定がないため、加盟国の行政権の分掌によって、誰が会合に出席するのかが問題となる場合があります。

議長：EUの顔として

欧州理事会議長は、2年半の任期で、1回限り再任が可能です。シャルル・ミシェル氏が現議長です。議長は国家元首と同等ではなく、「同輩中の首席」として、会合の準備と進行を主な役割としています。政策執行権はありませんが、EUの対外的な代表も務め、任期の前後や会合後に欧州議会に経過報告を行います。常任の議長職はリスボン条約で設置されました。それ以前は、欧州連合理事会議長国の首脳が輪番で務めていました。

開催地と会合：ブリュッセルでの集中開催

欧州理事会の会合は、年間4回、ブリュッセルで2日間にわたって開催されます。2002年までは議長国で開催されていましたが、ニース条約で加盟国数増加に伴い、ブリュッセルでの開催が定められました。2004年のEU拡大以降、会合はすべてブリュッセルで行われるようになり、ユストゥス・リプシウス・ビルが使用されています。会合を1か所で集中開催することで、EUの運営機関としての効率性が向上し、各国の国内事情に左右されない政策決定が可能となります。リスボン条約署名など、例外的なケースでは異なる開催地が用いられることもあります。

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