24ナイツ

エリック・クラプトン『24ナイツ』

エリック・クラプトンが1991年に発表したライブアルバム、『24ナイツ』は、彼のキャリアの中でも特に多様な音楽スタイルを披露したことで知られる作品です。このアルバムには、1990年および1991年の二度にわたり、ロンドンの格式高い会場、ロイヤル・アルバート・ホールで行われた連続公演の中から選ばれた音源が収録されています。

アルバムタイトルの「24ナイツ」は、特に1991年の2月から3月にかけて同会場で行われた24夜に及ぶ公演にちなんで付けられました。しかし、本作に収められているのは1991年の公演のみならず、その前年、1990年の1月から2月に行われたライブ演奏も含まれており、より長期間の活動が反映されています。

このアルバムの最大の特徴は、収録されたパフォーマンスが非常に多岐にわたる編成で行われている点にあります。これは、当時のクラプトンのライブが意図的に様々なスタイルで構成されていたことを示しており、当初は『Four Faces Of Eric Clapton』（エリック・クラプトンの4つの顔）という仮タイトルが検討されていたほどです。アルバムのディスク構成も、この多様な「顔」を明確に打ち出しています。

具体的には、ディスク1の前半には、より小編成のバンドによる親密な演奏が収められています。続くディスク1の後半では、彼の音楽的ルーツであるブルースに焦点を当て、著名なブルース・ミュージシャンをゲストに迎えた熱気溢れるセッションが展開されます。

ディスク2に移ると、前半部分では、9人編成という比較的大きなバンドによる、ダイナミックで洗練された演奏を聴くことができます。そして、ディスク2の後半は、本作のハイライトの一つとも言える、ナショナル・フィルハーモニック管弦楽団との壮大な共演が収録されています。オーケストラとの協演では、クラプトンの代表曲が新たなアレンジで披露され、その音楽性の幅広さを示しています。

収録された楽曲も、ロックの代表曲である「バッジ」や「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」、ブルースのスタンダード「ハヴ・ユー・エヴァー・ラヴド・ア・ウーマン」、ヒット曲「ワンダフル・トゥナイト」、そしてオーケストラとの共演による「エッジ・オブ・ダークネス」など、バラエティ豊かです。これらの選曲は、クラプトンがカバーする音楽ジャンルの広がりと、各編成におけるパフォーマンスの魅力を伝えています。

参加ミュージシャンも豪華な顔ぶれです。クラプトンを支えるレギュラーバンドのメンバーとして、グレッグ・フィリンゲインズ（キーボード）、ネイザン・イースト（ベース）、スティーヴ・フェローン（ドラムス）らが各編成で活躍しています。また、ブルースセッションには、バディ・ガイやロバート・クレイ、ジミー・ヴォーンといった名手たちがギターやボーカルで参加。9人編成ではフィル・パーマー（ギター）やチャック・リーヴェル（キーボード）、バックボーカルにケイティ・キスーンとテッサ・ナイルズが加わっています。オーケストラ共演時には、マイケル・ケイメンが指揮を担当し、楽曲に深みを与えています。

なお、この時期のロイヤル・アルバート・ホールでのブルース・セッションには、アルバート・コリンズもゲストとして参加していましたが、残念ながら本作には彼の演奏は収録されていません。

『24ナイツ』は、エリック・クラプトンが1990年代初頭に見せた、ブルースからロック、そしてクラシックとの融合までをも含む、多角的な音楽表現を捉えた貴重なライブ記録と言えるでしょう。彼の卓越したギタープレイはもちろんのこと、異なる編成での楽曲へのアプローチの違いを比較して楽しむことができる、聴き応えのあるアルバムです。

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